1日1回投与のLABA/LAMA/ICS配合剤とLABA/ICS配合剤
ノバルティス ファーマ株式会社は6月29日、世界に先駆けてLABA/LAMA/ICS配合喘息治療剤「エナジア(TM)吸入用カプセル中用量、高用量」(一般名:インダカテロール酢酸塩/グリコピロニウム臭化物/モメタゾンフランカルボン酸エステル)の製造販売承認を取得し、LABA/ICS配合喘息治療剤「アテキュラ(R)吸入用カプセル低用量、中用量、高用量」(一般名:インダカテロール酢酸塩/モメタゾンフランカルボン酸エステル)についても製造販売承認も取得したと発表した。また、日本で初めて、両剤用の吸入器に装着してスマートフォンと連動し、日々の服薬の記録や服薬リマインダー機能を持つブリーズヘラー用センサーも医師を通じて提供する。
エナジアは、長時間作用性β2刺激剤(LABA)のインダカテロール酢酸塩、長時間作用性抗コリン剤(LAMA)のグリコピロニウム臭化物、吸入ステロイド剤(ICS)のモメタゾンフランカルボン酸エステルのLABA/LAMA/ICS配合剤。専用の吸入器「ブリーズヘラー(R)」による1日1回投与で気管支拡張作用および抗炎症作用を発揮する。中用量および高用量の2規格ともにインダカテロール150μg、グリコピロニウム50μgを含有し、モメタゾンフランカルボン酸エステルはそれぞれ80μgおよび160μgを含有する。
アテキュラは、エナジア同様、ブリーズヘラーを用いて1日1回投与するLABA/ICS配合剤。低用量、中用量および高用量の3規格ともにインダカテロール150μgを含有し、モメタゾンフランカルボン酸エステルはそれぞれ80μg、160μg、320μgを含有する。
スマホとの連動で吸入確認や主治医への服薬記録共有も可能
単容量型ドライパウダー吸入器「ブリーズヘラー」は、吸入抵抗が少ないため、吸入制限のある患者に適したデバイスだ。同吸入器は、患者が、薬剤を正しく吸入できたかどうかを「聞く」「見る」「感じる」ことで確認できる設計となっているという。
ブリーズヘラー用センサーは、プロペラ・ヘルス社により開発されたブリーズヘラーに装着するセンサーとスマートフォン用のアプリで構成される。このブリーズヘラー用センサーは、吸入確認、服薬リマインダー、および患者が選択すれば主治医に日々の服薬の記録を共有することができる。
1日に複数回の吸入など投与の煩雑さで服薬アドヒアランス低下、喘息コントロールを困難に
日本の喘息予防・管理ガイドラインにおいて、治療ステップ3から4に該当する中用量または高用量LABA/ICSの投与でも喘息コントロールが不十分な患者に対しては、気管支拡張効果を有するLAMAが追加治療薬の一つとして推奨されている。しかし、現在、喘息の適応をもつLABA/LAMA/ICS配合剤はなく、1日に複数回の吸入や異なる吸入器の使用など投与の煩雑さが服薬アドヒアランスの低下を招き、喘息コントロールを難しくしている。したがって、単一吸入器による1日1回投与で3成分を同時に吸入でき、十分な喘息コントロールが得られる有効で簡便な治療薬が求められていた。
また、同ガイドラインの治療ステップ2から4で使用されるLABA/ICS配合剤のほとんどが1日2回投与で、服薬アドヒアランスの低下が懸念されている。1日1回投与のLABA/ICS配合剤でも、同ガイドラインのICSの用量区分(低用量、中用量、高用量)全てに対応する用量規格を持つ配合剤はない。これらのことから、1日1回の投与で、かつ同ガイドラインに即した全ての用量規格を持ち、患者の症状に応じて用量を選択できる有効なLABA/ICS配合剤が治療選択肢の一つとして求められていた。
エナジアとアテキュラ、それぞれの用量を評価した3つのP3試験
エナジアの中用量・高用量を評価した、国際共同第3相IRIDIUM試験(2302試験)は、中用量から高用量LABA/ICSでコントロールが不十分で、過去1年以内の喘息増悪歴を有する成人気管支喘息患者3,092例(日本人患者78例を含む)を対象とした52週間の無作為化二重盲検並行群間比較試験。エナジア中用量(LABA/LAMA/ICS:150/50/80μg)、高用量(150/50/160μg)、アテキュラ中用量(LABA/ICS:150/160μg)、高用量(150/320μg)を1日1回吸入投与した。
投与26週後のトラフFEV1において、エナジア中用量とアテキュラ中用量(0.074L[95%信頼性区間0.036,0.112]p<0.001)、およびエナジア高用量とアテキュラ高用量(0.065L[95%信頼性区間0.027,0.103]p=0.002)の比較において、統計学的に有意な差が認められた。エナジアによる副作用は、52週間の治療期間中に高用量群で8.3%、中用量群で7.5%に認められた。主な副作用は、高用量群では発声障害3.4%および中用量群では発声障害1.3%だった。
アテキュラの中用量・高用量を評価した、国際共同第3相PALLADIUM試験(2301試験)は、中用量から高用量ICSまたは低用量LABA/ICSでコントロールが不十分な気管支喘息患者2,216例(日本人患者118例を含む)を対象とした52週間の実薬対照無作為化二重盲検並行群間比較試験。アテキュラ中用量(1日1回150/160μg)、高用量(1日1回150/320μg)、モメタゾンフランカルボン酸エステル(MF)中用量(1日1回400μg)、MF高用量(1日2回400μg)を吸入投与した。
投与26週後のトラフFEV1はアテキュラ中用量とMF中用量(0.211L[95%信頼区間0.167,0.255]p<0.001)、アテキュラ高用量とMF高用量(0.130L[95%信頼性区間0.086,0.173]p<0.001)の比較において、統計学的に有意な差が認められた。アテキュラによる副作用は、52週間の治療期間中に高用量群で8.4%、中用量群で6.4%に認められた。主な副作用は、高用量群では発声障害1.1%および中用量群では発声障害0.9%だった。
アテキュラの低用量を評価した試験国際共同第3相QUARTZ試験(2303試験)は、低用量ICSでコントロールが不十分な気管支喘息患者802例(日本人患者52例を含む)を対象とした12週間の実薬対照無作為化二重盲検並行群間比較試験。アテキュラ低用量(150/80μg)またはモメタゾンフランカルボン酸エステル(MF)低用量(200μg)を1日1回吸入投与した。
投与12週後のトラフFEV1は、アテキュラ低用量とMF低用量との比較において(0.182L[95%信頼区間0.148,0.217]p<0.001)、統計学的に有意な差が認められた。アテキュラ低用量による副作用は3.8%に認められた。主な副作用は、発声障害0.8%および咳嗽0.8%だった。
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