CGAN応用で、がん幹細胞を識別、画像生成できるAIを検討
東京工科大学は6月26日、培養細胞またはがん組織の位相差顕微鏡画像に写るがん幹細胞を識別する人工知能(AI)技術を開発したと発表した。これは、同大応用生物学部の杉山友康教授とコンピュータサイエンス学部の亀田弘之教授ら研究グループによるもの。研究成果は、「Biomolecules」に掲載されている。
画像はリリースより
腫瘍は、がん幹細胞と呼ばれる非常に少数の細胞群によって維持されており、これを標的とした治療法が注目されている。その研究ツールとして各種がん幹細胞の培養細胞の利用が始まっている。幹細胞が特徴的な細胞形態を呈することは、一部の研究者らの間では知見があるが、幹細胞性を簡単に評価する方法はない。
一方、近年のAIによる画像生成技術「Conditional Generative Adversarial Networks」(以下、CGAN)では、対応する2つの画像をマッピングすることで、学習済みAIが元画像を変換し実画像に近い画像を生成することができる。本研究では、このCGANを応用し、がん幹細胞を識別して画像を生成するAIの作製を検討した。
培養したがん幹細胞を深層学習したAIは、実画像と比較して類似性と感度が平均で約40%、特異度97%の精度でがん幹細胞を識別
はじめに、位相差画像を用いて細胞・組織を撮影し、その画像に含まれるがん幹細胞の形態をAIで深層学習した。がん幹細胞の教師用画像には、幹細胞の性質を維持した細胞だけが蛍光を発するNanog-GFPレポーターの蛍光画像を使用した。その結果、培養皿で培養したがん幹細胞を深層学習したAIは、実画像と比較して類似性と感度が平均して約40%、特異度が97%の精度で位相差画像に含まれるがん幹細胞を識別して、その画像を生成した。また、腫瘍組織のがん幹細胞を深層学習したAIは、培養皿のがん幹細胞の学習よりは精度が劣っていた。しかし、腫瘍組織に存在するがん幹細胞と非がん幹細胞を組織診断することにおいて、AIが作成した画像は判断材料としての有用性を示した。
特別な標識をしていないがん幹細胞をAIが検出したことは、将来の医生物学的医療の新しい可能性を示した。各種がん幹細胞の細胞形態を学習したAIを細胞ごとに用意することで、「培養したがん幹細胞の幹細胞性評価」や「腫瘍組織のがん幹細胞診断」といった新しい測定技術に応用される可能性もある。「生命科学や医学分野の画像解析において、未同定の形態の解析にAIを使った本研究手法が応用されることが期待される」と、研究グループは述べている。
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・東京工科大学 プレスリリース