富岳は、富士通が設計・開発したCPU(中央演算処理装置)を搭載し、既に国内では、新型コロナウイルスの治療薬探索などに活用されている。同日、記者会見した理研の松本紘理事長は、「まずは新型コロナウイルス対策で様々なシミュレーションを行い、トップに立ったからといって慢心することなく、今後もさらに富岳の力を引き出すよう努力したい」との考えを示した。
TOP500は年2回発表されており、富岳は▽演算速度▽シミュレーション計算▽AIの学習速度▽ビッグデータの処理性能――の4部門で首位を獲得した。富士通が設計・開発したCPUを約15万個搭載し、1秒間に41京回以上の演算が可能で、2位の米国「サミット」に約2.8倍の差をつけた。
同分野で日本勢のスパコンがトップとなるのは、2011年の「京」以来となる。近年は米国、中国勢の後塵を拝していたが、記者会見で富士通の時田隆仁社長は、「改めて日本の技術力、ものづくりの強さを世界に示せた」と胸を張った。
富岳は「京」の後継機で、20年代の社会的・科学的課題を解決して日本の成長に貢献することを目的に、理研と富士通が共同開発したもの。
5月に理研に設置後、21年度からの共用開始を目指して開発・整備が進められていたが、新型コロナウイルス対策に高い演算機能を活用するため、前倒しで稼働している。
具体的には、約2000種類の既存薬の中から、分子動力力学計算でウイルスの標的蛋白質に高い親和性を示す治療薬候補を探索、同定している。
一方、理研は、新型コロナウイルス対策の研究にスパコンを活用するために設立された「COVID-19ハイパフォーマンスコンピューティングコンソーシアム」に参加し、富岳を活用する考えも明らかにした。
米国のITベンダー、研究機関等が連携して立ち上げた同コンソーシアムでは、スパコンの演算能力を活用し、研究者が伝染病学や分子モデリングなどを高速に実行できることを目的としている。