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神経膠腫、細胞外小胞による浸潤・転移メカニズムを解明-金沢大

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2020年06月23日 AM11:30

神経膠腫の進展における腫瘍由来細胞外小胞の関与を検討

金沢大学は6月22日、細胞外小胞による神経膠腫の進展(浸潤・転移)機構の解明に成功したと発表した。この研究は、同大ナノ生命科学研究所の華山力成教授、河原裕憲助教、医薬保健研究域医学系の中田光俊教授、筒井泰史特任助教らの研究グループによるもの。研究成果は、英国科学誌「Carcinogenesis」に掲載されている。

近年、免疫・神経・がんなどさまざまな医学研究分野において、細胞外小胞の研究が進められている。細胞外小胞は体内のほぼ全ての細胞が分泌する内因性の微粒子であり、分泌細胞に特異的なタンパク質や核酸・脂質などを含有している。これらの構成成分は細胞・疾患ごとに異なっているため、血液や尿などの体液から採取した細胞外小胞は、病気の早期発見や予後診断のバイオマーカーとして期待されている。また、細胞外小胞はこれらの分子を周囲の細胞へと送り届けることでさまざまな細胞応答を引き起こし、種々の生命現象や疾患の発症に関与することが示されている。

今回、研究グループは、神経膠腫の進展における腫瘍由来細胞外小胞の関与を検討した。神経膠腫は脳腫瘍の中で最も悪性度が高く、手術や放射線治療・抗がん剤治療を組み合わせた集学的治療を行った場合であっても平均生存期間が約2年とされ、予後が悪い。そのため、その進展機構の早急な解明と新規治療法の開発が望まれている。


画像はリリースより

細胞外小胞産生を抑えることでマウスの脳腫瘍が10分の1以下に縮小

研究グループはまず、細胞外小胞の産生に関与する分子を欠損させた神経膠腫細胞株を樹立し、その細胞をマウス脳内へと移植した脳腫瘍モデルマウスを作製した。このマウスを用いて解析した結果、細胞外小胞産生を抑えることで、脳腫瘍サイズが10分の1以下に縮小し、脳内での浸潤・転移が抑えられ、マウスの生存期間が25%延長することが明らかになったという。

さらに、腫瘍が放出した細胞外小胞が、腫瘍周囲のミクログリアに取り込まれ、血管新生の阻害因子であるトロンボスポンジンの遺伝子発現を低下させることで、ミクログリアによる血管新生を促進することが判明。トロンボスポンジンの遺伝子発現を低下させるタンパク質WT1が、神経膠腫患者の腫瘍由来細胞外小胞に含有されており、ミクログリアによる血管新生能を制御することが示されたという。

腫瘍由来WT1含有細胞外小胞<ミクログリア取り込み<血管新生促進<浸潤・転移へ

今回の研究により、神経膠腫において、腫瘍が分泌する細胞外小胞がミクログリアによる血管新生を増強し、腫瘍の浸潤・転移を促進する腫瘍微小環境の構築に関与する分子機構が明らかになった。

今後、その制御に関わる細胞外小胞内のWT1量の測定により、神経膠腫の早期発見や予後診断が可能になると考えられる。さらに、細胞外小胞の産生やWT1タンパク質量を低下させる方法を研究することで、神経膠腫に対する新たな治療法の開発へとつながることが期待される、と研究グループは述べている。

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