長年不明だった、スイミングスクール参加による「ぜんそく・鼻炎」予防効果
国立成育医療研究センターは6月15日、同施設で2003年から一般の小児を対象として行ってきた出生コホート研究(成育コホート)において、3歳でスイミングスクールへ参加していると5歳時に喘鳴(ゼーゼー)や鼻炎が少なくなるのか、関連性を調査した。その結果、3歳の時点で喘鳴あるいは鼻炎がない人では、スイミングスクールの参加と喘鳴や鼻炎に関連がなく(予防効果がない)、また、3歳の時点で喘鳴あるいは鼻炎がある人でも同様に関連がない(治療効果がない)ことがわかったと発表した。これは、同センターのアレルギーセンター大矢幸弘、山本貴和子、苛原誠の研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS ONE」に掲載されている。
画像はリリースより
低年齢でのスイミングスクールへの参加が、その後のぜんそくや鼻炎の発症を予防できるかについては、以前からいろいろと議論されてきたが、長い間、結論は出ていなかった。特に、日本での一般集団を対象とする検討はこれまでなく、アレルギー疾患の予防や治療のために水泳を行うべきかという問いに答えられる科学的根拠がなかった。
研究グループは一般の妊婦に協力を依頼し、出生した子どものアレルギー疾患発症の有無など確認する成育コホートを2003年から行っている。そこで今回、低年齢でのスイミングスクールへの参加が、その後の喘鳴や鼻炎の発症を予防できるのか、すでに発症している人にとっては治療効果があるのかを明らかにするため、解析を行った。
水泳にアレルギーや鼻炎の予防・治療効果なし、ただし健康増進作用は否定しない
今回の研究では、成育コホート研究において、出生から子どもが5歳になるまで経過を観察できた1,096人を対象とした。両親へのアンケートで、3歳時にスイミングスクールに参加していた子ども126人と、参加していない残りの子ども970人の中で、5歳時のアンケートで過去1年における喘鳴や鼻炎のある子どもの数について、アレルギー疾患に影響を与える因子を調整し、多変量解析を用いて比較検討した。また、予防効果を見るために喘鳴や鼻炎がまだない人の、治療効果を見るために喘鳴や鼻炎がすでにある人の、サブグループ解析を行った。
その結果、日本の一般集団を対象とした場合では、低年齢におけるスイミングスクールへの参加がその後のアレルギー疾患について、予防効果も治療効果も持たないことがわかったという。
研究グループは、「今回の結果は水泳による健康増進作用を否定するものではないが、アレルギー疾患の予防や鼻炎に対する予防や治療を目的とした過度な推奨は必要ないと考えられる」と、述べている。
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・国立成育医療研究センター プレスリリース