■改定後薬価を維持できず
日本製薬団体連合会保険薬価研究委員会は、4月に実施された薬価改定に関する研究報告をまとめた。薬価制度の抜本改革が実施された2018年度改定に比べると影響度合いは小さかったが、「半年で2回改定を受けたことで全体としてはマイナス影響が推察される」と分析。昨年10月の消費増税に伴う臨時改定後薬価を上限とする算定ルールが適用されたために、18年度改定で新薬創出等加算の対象外、20年度改定で対象となった品目でも、18年度改定後の薬価を維持できなかったことを要因に挙げた。
薬価研は、薬価研運営委員会社54社、日本ジェネリック製薬協会(JGA)36社、米国研究製薬工業協会(PhRMA)と欧州製薬団体連合会(EFPIAジャパン)21社の合計94社に対し、20年度改定に関する調査を実施した。
薬価が引き上げられた品目数と全品目数に占める比率は306品目で2.2%となり、18年度改定時に実施した調査結果の2.7%とほぼ変わらなかった。薬価が据え置かれた品目数では4246品目と全体の30.9%、引き下げ品目数は9202品目の66.9%となった。
18年度改定では、薬価が据え置かれた品目の比率が20.9%、引き下げ品目は74.4%となっており、単純に比較すれば2年前の改定ほど影響は受けなかったことがうかがえる。
ただ、各社から薬価改定への影響を自由回答で聞いたところ、昨年10月の消費税引き上げに伴う薬価改定が20年度改定に影響を与えたとの意見が多く挙がった。
中でも、改定後薬価の上限を19年度改定後薬価としたことについて否定的な声が相次いだ。
18年度改定で新薬創出等加算の対象外であった品目が希少疾病用医薬品の指定を受けても、19年度改定で薬価引き下げを受けたために、前回改定後薬価を維持できなかった。
ある企業は、「改定薬価が改定前薬価を超えない大原則があったため、企業係数の変更などが加算額として反映されず、18年度改定薬価に増税分を加味した額まで戻らなかった」と回答した。
薬価研は「19年度改定は消費税引き上げのタイミングで薬価を見直したものであり、“臨時の薬価”と考えられる」とし、19年度改定後薬価を上限とするのは妥当ではないとの考えを示した。
その上で、「20年度改定における改定後薬価の上限については、19年度改定後の薬価ではなく、18年度改定後の薬価に消費増税分を乗じた額を用いるなどの対応を図るべきであった」と指摘した。
新薬創出等加算の累積加算額の取り扱いについても言及。19、20年度の二度の改定で加算額を累積すると、「該当品目が累積加算額を返還する時の薬価が、理論上、新薬創出等加算の対象とならない場合よりも低い水準になる」とし、「20年度改定における新薬創出等加算の累積額については19年度改定の加算額を累積額から解消すべきだった」との見解を示した。