■厚労省「事務的準備の必要」
中央社会保険医療協議会薬価専門部会は10日、来年からの毎年薬価改定に向け、2020年度薬価調査の実施をめぐって日本製薬団体連合会、日本医薬品卸売業連合会など業界団体から意見を聞いた。新型コロナウイルスの影響による営業自粛で適切な価格交渉ができないことなどから、一致して「中間年の薬価調査を行うべきでない」と訴えた。部会後の総会でも、診療側委員の大半が調査実施に反対を表明した。厚生労働省保険局医療課の田宮憲一薬剤管理官は、調査の有無について「新型コロナウイルスの状況と医療機関への影響などを注意深く見極め判断する」としつつ、「実施する場合の内容は今月の中医協で了承してもらい、事務的に準備を進める必要がある」との考えを示した。
薬卸連はヒアリングで、新型コロナウイルス感染拡大の影響でほとんどの医薬品卸が営業活動を自粛しているため、見積書の提示どころか条件面での調整も行えていないこと、中間年の薬価調査の前提となる単品単価契約や早期妥結の推進といった環境整備が不十分な現状などを訴え、「中間年の薬価調査を実施できる状況ではない」と主張した。
日本製薬団体連合会、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIAジャパン)も、新型コロナウイルスに対するワクチン・治療薬の開発や医薬品の安定供給に優先的にリソースを割いているため、「新型コロナウイルス対応下にあることを踏まえ、今回の薬価調査、薬価改定を実施する状況にない」とした。
診療側の今村聡委員(日本医師会副会長)は「現状を最も知る人たちが正しい改定にならないと言っている。薬価調査と改定は延期すべきと次の骨太方針に意見として示すことが中医協の役割だ」と訴えた。
一方、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「今年の骨太方針の閣議決定が7月にずれ込みそうなことや予算編成のスケジュールを考慮すると、調査方法は今月末までに決める必要がある。適切な調査方法を粛々と議論することが中医協の役割」とした。
部会後に開催された中医協総会でも、有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)が「価格交渉では接触が一番の問題となり、検品等の作業も対面でなければできない。こうした中で薬価調査を進めることは反対」と述べるなど、診療側委員の大半が反対意見を示した。
ただ、佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)は、国民皆保険制度の持続とイノベーション推進の両立など薬価調査の目的に言及した上で、「これを踏まえれば、仮に今年の調査が無理になったとしても、調査方法やスケジュールの議論は継続すべき」と訴えた。