FGMによる測定機会を一定期間提供することは、測定終了後も持続する糖尿病コントロールの改善をもたらす
名古屋大学は6月10日、インスリンを使用していない2型糖尿病患者を対象としたランダム化比較試験を実施し、フラッシュグルコースモニタリング(FGM)による測定機会を一定期間提供することは、測定終了後も持続する糖尿病コントロールの改善をもたらすことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科糖尿病・内分泌内科学の和田絵梨大学院生、同大医学部附属病院の尾上剛史病院助教、同大医学系研究科の有馬寛教授らの研究グループによるもの。研究成果は、科学誌「BMJ Open Diabetes Research & Care」電子版に掲載されている。
画像はリリースより
従来の指先穿刺による血糖自己測定器(SMBG)は、インスリンなどの注射製剤使用中の1型・2型糖尿病を対象に保険適用となっている。また、インスリンを使用していない2型糖尿病においても糖尿病コントロール改善効果が示されており、糖尿病自己管理のための手段としても有用とされている。
一方、近年登場したFGM(間歇スキャン式持続グルコースモニタリング(isCGM)とも呼ばれる)は、血糖測定器の一種で、センサーを腕に装着することで組織間質液中のグルコース濃度を持続的に測定する。これは血液中のグルコース濃度(血糖値)に概ね一致しており、FGMを用いることで測定ごとの指先穿刺や消毒を必要とせず、連続的な血糖値の変化を把握できる。
これまでに1型糖尿病およびインスリンを使用している2型糖尿病において、FGMの使用がSMBGの使用と比較し低血糖の占める時間・頻度を減少させること、HbA1cを改善させることが報告されている。FGM使用の効果がインスリン投与量の調整の結果だけではない場合、糖尿病患者の大半を占める、インスリンを使用していない2型糖尿病においても、FGMの使用はSMBGと比較して、糖尿病コントロールをより改善させる可能性がある。しかし、これまでその有用性については明らかになっていなかった。
24週間後のHbA1c変化量、FGM群がSMBG群との比較で有意な改善
今回の研究では、インスリンを使用していない2型糖尿病におけるFGMの効果を明らかにすることを目的として、一定期間のFGMまたはSMBGによる測定機会の提供が糖尿病コントロールに与える影響を比較するランダム化比較試験を実施した。同試験は、名古屋大学医学部附属病院など5医療施設に通院中のインスリン非使用2型糖尿病患者100人(FGM群49人、SMBG群51人)を対象とし、そのうち93人(FGM群48人、SMBG群45人)が研究を最後まで完了した。
一定期間(12週間)のFGM(FreeStyleリブレ(R)、アボットジャパン合同会社)またはSMBGによる測定機会を提供した結果、12週間後のHbA1c変化量はFGM群(-0.43%)、SMBG群(-0.30%)となり、共に改善を認めた。24週間後のHbA1c変化量はFGM群(-0.46%)がSMBG群(-0.17%)と比較し有意な改善を認めたという(P=0.022)。糖尿病治療満足度質問票(DTSQ)のスコアにおいても、FGM群がSMBG群と比較し有意な上昇を認め、FGM群でより治療満足度が高かったことがわかった。
FGM群においては平均血糖、血糖変動指標、目標血糖範囲内(70-180mg/dl)の占める時間、高血糖(>180mg/dl)の占める時間についてもSMBG群と比較し有意な改善を認めた。内服薬の変更については12週、24週とも両群間で有意な差は認めなかったという。
従来想定されていたインスリン投与量調整による効果以外の糖尿病コントロール改善効果を示唆
今回の研究結果より、FGMには従来想定されていたインスリン投与量の調整による効果以外の糖尿病コントロール改善効果があることが示唆された。この糖尿病コントロール改善効果は、生活習慣の改善に起因することが推測されるという。
研究グループは今後、FGMによる生活習慣改善についての具体的な評価を実施し、FGMの幅広い糖尿病患者に対する糖尿病自己管理のための手段としての有用性を明らかにしていきたい、と述べている。
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・名古屋大学 プレスリリース