エコー画像をリアルタイムに観察しながら穿刺の練習が可能、2020年1月に製品化
東北大学は6月9日、エコー下穿刺皮膚モデルの開発・製品化に成功したと発表した。この研究は、青森県産業技術センター工業総合研究所、東北大学クリニカル・スキルスラボ、株式会社アピールらの研究グループによるもの。
画像はリリースより
青森県産業技術センター工業総合研究所では、「青森ライフイノベーション戦略」の重点分野である「医工連携」に係る取り組みにおいて、医療訓練用の血管モデルや腎臓モデルといった臓器モデルの研究を行っている。一方で、東北大学クリニカル・スキルスラボでは、超音波診断装置(エコー装置)で視認しながら血管に針を刺すエコー下穿刺という操作の訓練を行うための皮膚モデルのニーズがあった。
青森県産業技術センター工業総合研究所は、株式会社アピールを通じてこのような皮膚モデルのニーズが全国的にあることを知り、臓器モデル製造技術を用いて皮膚モデルを試作した。東北大学クリニカル・スキルスラボでエコー下穿刺に使用したところ、実用できる可能性があることがわかり、2017年11月より3者で共同研究を開始。2019年3月に3者共同で特許出願し、2020年1月に製品化した。
今回製品化されたエコー下穿刺皮膚モデル「「Sensist」シリーズ補助循環トレーニングモデルAKS-HJ1」は、超音波(エコー)画像をリアルタイムに観察しながら穿刺の練習が可能で、モデル内に穿刺された針の状態が明瞭に確認できるという。また、エコーゼリーが必要ないため、塗る、拭き取るといった手間がかからない。その他、人体のような適度な弾力性を有しているとしている。
東北大学クリニカル・スキルスラボのECMO研修で使用
新型コロナウイルスの治療において、体外式膜型人工肺(ECMO)の必要性が急激に高まっている。東北大学クリニカル・スキルスラボでは、全国の医療従事者を対象にECMOの研修を月に1回定期的に行っている。この研修は、東北医科薬科大学病院の遠藤智之氏が開発したもので、今回製品化された皮膚モデルは、この研修においてECMO導入のための血管確保の学習に使用されている。ECMOを管理する医療従事者の不足が問題となっていることから、今後ニーズが高まるものと考えられる。
また、エコー下穿刺は透析治療をはじめ、さまざまな治療への利用が進んでいる。医療従事者の穿刺訓練において、今回開発されたエコー下穿刺皮膚モデルの活用が期待される、と研究グループは述べている。
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・東北大学 プレスリリース