指定難病EDSの9割に見られる慢性疼痛
大阪工業大学は6月4日、「エーラス・ダンロス症候群(EDS)」の慢性疼痛について、糖タンパク質のテネイシンX欠損のマウスモデルを用いた世界で初めての解析により、患者と同様の神経障害性疼痛が生じることなどを明らかにしたと発表した。この研究は、同大生命工学科の芦高恵美子教授・宇戸禎仁教授、島根大学総合科学研究支援センターの松本健一教授、大阪医科大学麻酔科学教室の南敏明教授・伊藤誠二客員教授の研究グループによるもの。研究成果は、学術雑誌「Scientific Reports」に掲載されている。
厚生労働省指定難病であるEDSは、発症頻度が5,000分の1人と推計されている遺伝性疾患。皮膚や関節の過伸展性や脆弱性などの症状が特徴で、原因遺伝子や症状から13の病型に分類される。また、患者の90%に見られる慢性疼痛のメカニズムについては、明らかになっていない。
画像はリリースより
原因遺伝子「テネイシンX」欠損マウスで、アロディニアの誘発を確認
今回、研究グループはEDSの原因遺伝子の1つで、コラーゲン線維に結合し関節や腱、皮膚の結合組織構築を担う細胞外マトリックス糖タンパク質のテネイシンXに着目。テネイシンX欠損マウスを用いて、EDS患者と同様の神経障害性疼痛の特徴である触覚などの弱い刺激でも痛みとなるアロディニア(異痛症)を誘発することを明らかにした。また、テネイシンX欠損マウスでは、有髄感覚神経が過敏になっていることも電気刺激実験でわかったという。
同研究は、モデルマウスを用いたEDSの慢性疼痛の世界初となる研究。研究グループは、2019年に東京で開催されたEDSの国際学会で同研究について発表し、臨床診断にもつながる研究との高い評価を受けたという。
今後、研究グループはEDSの慢性疼痛発症のメカニズム解明に加え、力学刺激が慢性疼痛を引き起こすメカニズムやコラーゲンを中心とする細胞外マトリックスの疼痛発症の解明も目指す、と述べている。
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