■適切な薬価調査は困難
日本医薬品卸売業連合会は5月28日の通常総会で、コンプライアンスの徹底による社会的信頼の回復、新型コロナウイルス感染症対策と医薬品の安定供給、中間年薬価改定の実施方針見直しについて決議した。
薬卸連は、医薬品卸について、災害など緊急時でも医薬品供給を通じて医療に貢献するため、流通改善について関係者と連携しつつ、推進に努めてきたとする一方で、昨年11月には、独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会による強制調査が会員構成員に対して行われたと指摘。
「関係者の不信を招き、国民に疑念を生じさせたことを重く受け止めなければならない」とした。
現在、新型コロナウイルス感染症が国民生活、日本の社会経済活動に大きな影響を与えているとし、医療についても感染症対策が推進される状況下で逼迫が懸念され、外来の大幅減、入院による手術延期など、平常時とは全く様相を異にしているとの認識を示した。
こうした深刻な局面にある中で、2021年度を初年度とする中間年の薬価調査・薬価改定の議論が開始されたことに言及。「新型コロナウイルス感染症の影響により、ほとんどの医薬品卸は、医療機関・保険薬局から納品以外の訪問自粛を要請されているため、営業活動が行えず、配送業務を中心に活動せざるを得ない状況である」と訴えた。
また、価格交渉について「見積書の提示どころか、条件面での調整も行えていない。中間年の薬価調査に当たっては、単品単価契約や早期妥結などを積極的に推進するとされたが、医療機関・保険薬局でもそれらに対応する余裕がなく、適切な価格交渉を行うことは困難な状況である」と指摘した。
一般用医薬品については、感染予防の大切さが指摘されるなどセルフメディケーションの重要性が再認識されているとし、セルフケア関連市場の活性化を図り、セルフメディケーションのさらなる推進に向けて取り組んでいかなければならないとした。
その上で、薬卸連は、これまでに例のない大きな困難に立ち向かうため、通常総会に当たって以下の通り決議した。
▽公正かつ自由な競争に十分留意するなど、コンプライアンスの徹底を図りつつ、社会的信頼の回復に向けて重大な決意をもって取り組む。
▽新型コロナウイルス感染症の終息が見えない状況下において感染防止に努めると共に、医薬品の安定供給が自らの最大の使命であることを再認識し、医療に支障を生じさせることのないよう全力で取り組む。
▽新型コロナウイルス感染症の影響により、中間年の薬価調査・薬価改定について議論された当時とは、医療や医薬品流通の現況は大きく異なっている。このような状況下では、中間年の薬価改定の実施方針は見直すべきである。