■低濃度や納品期遅れなど
日本医師会は3日、手指消毒を目的としたエタノールを各都道府県の医療機関や高齢者施設に優先的に供給する厚生労働省のスキームについて、全体の53%に当たる25の都道府県医師会で「何らかの問題があった」との調査結果を公表した。納品時期が遅い、比較的高額である、濃度が低くキャンセルの申し出があったなどの事例が見られた。
長島公之常任理事は、「供給体制の立て直しが必要。医療機関等に必要な量を確実かつ安定的に、医療機関側の負担を増やさず国や自治体が責任を持って供給すべき」との考えを示した。
厚労省は、手指を消毒するエタノールが医療機関等で不足する問題に対応するため、都道府県備蓄分を放出しても需要に対応できない施設に優先してエタノールを供給するスキームを構築している。
供給対象は、新型コロナウイルス感染症患者や感染疑いの人を受け入れている医療機関、エタノールの在庫が逼迫している高齢者施設などとしている。
調査は、各都道府県医師会を対象に、同スキームによる供給実態を調べたもの。その結果、何らかの問題が確認されたのは25医師会で、全体の53%を占めた。都道府県名は非公開としている。
その一例を見ると、「国による必要量調査の期限が短すぎる」「納品時期が遅く不明確である」「日常的に購入しているエタノールよりも高額」「濃度が低いなどの理由でキャンセルの申し出があった」などが挙げられた。
調査結果を踏まえ、長島氏は、「まず都道府県の備蓄で需要に対応することの徹底が必要だ。国に対して自治体の備蓄に関する現状と今後の計画を調査し、不十分であれば改善を求めるよう要望したい」との考えを示した。
その上で、「備蓄だけでは需要に対応できない場合に備え、補完的な方法として優先供給スキームが必要で、今後も継続すべき」と述べた。