原発不明がんの免疫プロファイリング解析でオプジーボへの期待が示されていた
近畿大学は5月31日、原発不明がんに対して、分子標的治療薬「オプジーボ」(一般名:ニボルマブ)の有効性を検討したP2試験(医師主導治験)で、その有効性を世界で初めて示したと発表した。これは、同大医学部内科学教室腫瘍内科部門の谷崎潤子助教、林秀敏講師を中心とした多施設共同研究グループによるもの。研究成果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO)の「Special Clinical Science Symposium」(オンライン)で発表された。
画像はリリースより
原発不明がんは全がん患者の2~5%であり、一般的にその予後は非常に悪く、診断時からの1年生存率が50%程度とされている。診断時にはすでに進行・転移している状況であり、複数の臓器に転移が認められる患者が全体の半数以上を占め、生存期間の中央値は約6~9か月、5年生存率は2~6%と極めて予後が悪いのが特徴的だ。また、診断の難しさやさまざまな病態の患者が含まれる集団であるなどの特徴から、他のがんと比べて治療開発が進んでいない。
オプジーボを含む免疫チェックポイント阻害剤は、多数のがん腫において標準治療の一部となっているが、原発不明がんにおける免疫チェックポイント阻害剤の効果については、少数例の報告があるのみだった。同大では2019年に、原発不明がんにおける免疫プロファイリングを解析した結果から、原発不明がんにおいても免疫チェックポイント阻害剤の効果が期待できる可能性を報告している。それを踏まえ、原発不明がん患者に対するオプジーボの医師主導治験となるP2試験(NIVOCUP試験)が、同大医学部内科学教室(腫瘍内科部門)および同大学病院臨床研究センターの主導により国内10施設で行われた。
治療歴のある原発不明がん患者で6か月時点での無増悪生存割合は32%
原発不明がんに対して抗がん剤治療歴のある患者(既治療群)45人と、抗がん剤治療歴のない患者(未治療群)11人の合計56人が参加。主要評価項目だった既治療群における奏効率は22.2%(95%信頼区間:11.2-37.1%)と目標値を達成した。また、既治療群における無増悪生存期間の中央値は4.0か月(95%信頼区間:1.9-5.8か月)、6か月時点での無増悪生存割合は32%、生存期間中央値は15.9か月(95%信頼区間:8.4-21.5か月)だった。
一方、未治療群における奏効率は18.2%(95%信頼区間:2.3-51.8%)、無増悪生存期間の中央値は2.8か月(95%信頼区間:1.1-6.5か月)。6か月時点での無増悪生存割合は27%、生存期間中央値は未到達(95%信頼区間:2.6か月-未到達)であり、過去に報告されている化学療法による治療成績と比べても有効な治療成績は認められなかった。
PD-L1高発現の患者で治療効果が高いと判明
同試験では、原発不明がんの腫瘍におけるPD-L1高発現患者で治療効果が高いことが示され、オプジーボの治療効果(奏効率、無増悪生存期間、全生存期間)が関連することが示された。同試験で示された既治療群のオプジーボ奏効期間は12.4か月(95%信頼区間:2.8か月-未到達)であり、みなし標準治療として実地医療で最も頻用される、プラチナ製剤とタキサン製剤の併用療法の奏効期間中央値の報告(約4~7か月)と比べて良好な結果だった。
オプジーボの最大の臨床的特徴として長期間にわたる奏効の持続がもたらす延命効果が挙げられるが、これが原発不明がんでも期待できる可能性が示された。「本試験は世界で初めて報告された原発不明がんに対しての有効性を報告した医師主導治験であり、この結果から今後オプジーボが原発不明がんの標準治療となることが期待される」と、研究グループは述べている。
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