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ハンセン病既往者の眼後遺症、視機能障害の程度が重篤-杏林大

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2020年06月02日 PM12:00

国立療養所多磨全生園受診者を対象に、ハンセン病が長期的に目に与える影響を評価

杏林大学は5月30日、ハンセン病既往者の眼後遺症について評価をした結果、国立療養所多磨全生園の眼科では36.3%が視覚障害に該当すること、ハンセン病既往者の眼後遺症は高齢化に伴う要因も加わり、視機能障害の程度が重篤であることを確認したと発表した。この研究は、同大眼科学教室の重安千花非常勤講師、眼科学教室の堀江大輔専修医、眼科学教室の慶野博准教授、眼科学教室の山田昌和教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「日本眼科学会雑誌」に掲載されている。

ハンセン病は抗酸菌のらい菌(Mycobacterium leprae)による慢性感染症。衛生環境の整った現代の日本では感染および発症することはほとんどなく、治療も可能だ。乳幼児期に大量のらい菌に暴露されることにより感染した場合、途上国では5~10年程度の潜伏期間を経てから発症する。近年、日本における新規患者は長期にわたる潜伏期間を経たのちに免疫力の低下した高齢者に限定されるため、発症者は年間0~1人だが、在日外国人を含めると年間3人前後の発症がみられる。世界的にも新規患者の発症は減少傾向にあり、15年前と比較して現在は約半数の20万人と報告されている。そのうち4分の3は東南アジア諸国が占めており、世界保健機関(WHO)では感染制御に向けた対策が現在もとられている。

らい菌は、皮膚組織および末梢神経を構成するシュワン細胞に寄生し、肉芽腫性の病変を生じさせる。免疫状態により臨床症状は異なり、らい菌に対する免疫反応が弱い場合に、皮膚の紅斑や結節などを生じ、進展すると知覚麻痺が生じて筋肉の萎縮を引き起こし、後遺症となる。日本におけるハンセン病既往者は、化学療法の確立前の発症例が大半をしめるとされ、約60%に眼後遺症がみられると報告されている。

日本にはハンセン病既往者が療養している13の国立療養所と1つの私設療養所があり、国立ハンセン病療養所の入所者数は1,090人、平均年齢86.4歳(2020年4月)と報告されている。入所者の高齢化に伴い、ハンセン病に伴う眼後遺症に加え、加齢性の疾患により視力障害が高度になってきている。杏林大学眼科学教室は、国立療養所多磨全生園(東村山市)で眼科診療を行っていることから、今回、受診した入所者および園外通院者を対象としてハンセン病が長期的に目に与える影響について評価をした。

199人398眼を対象に評価、36.3%が視覚障害

全生園に登録をされていた全238人のうち、眼科を受診した199人398眼(男性106人、女性93人;平均年齢84.2歳)を対象とした。視力が測定できた179名の矯正視力は0.2だった。日本の視覚障害の基準は、2018年に認定基準が改正され、現在は最も程度の軽い6級(視力の良い方の眼の視力が0.2以上0.6以下かつ他方の眼の視力が0.02以下のもの、と定義)となっている。同基準に準じると、65人(36.3%)が視覚障害に該当した。

主なハンセン病の眼後遺症として、兎眼116眼(29.2%)、兎眼性角膜炎に伴う角膜混濁66眼(16.6%)、角膜らい腫による角膜混濁25眼(6.3%)、帯状角膜変性症26眼(6.5%)だった。白内障は149眼(37.4%)にみられ、眼内レンズの挿入は143眼(35.9%)、無水晶体眼は24眼(6.0%)だった。また、慢性虹彩毛様体炎が17眼(4.2%)、眼球癆(眼球摘出を含む)は40眼(10.1%)にみられたという。

眼表面と慢性的な炎症の管理がハンセン病眼後遺症の長期的な予後に影響

今回の調査結果より、眼表面と慢性的な炎症の管理がハンセン病の眼後遺症の長期的な予後に影響すると考えられる。低視力が多いために視力低下について自覚しづらく、角膜知覚の低下が生じているため痛みを感じにくいのも悪化する要因となっているという。

研究グループは、日々の点眼介助の際に状態に変化がないかどうか観察することが重要だとしている。また、「ハンセン病既往者の眼後遺症は高齢化に伴う要因も加わり、視覚障害の程度が重篤であることを確認し、長期にわたる眼科疾患の管理が重要であると結論付けた」と、述べている。

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