毎年薬価改定の実施をめぐっては、18年度の薬価制度抜本改革で、20年中に対象品目の範囲を設定することとされており、薬価専門部会で調査の実施方法を具体的に議論することとしていた。
この日の部会で厚労省は、新型コロナウイルス感染症が販売側と購入側の双方に多大な影響を与えていることから、卸や製薬企業などの関係団体からヒアリングを行う案や、通常改定と同様のスケジュールを踏襲し、準備期間を考慮して遅くとも6月中旬には実施準備を始める案などの論点を示した。
診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、「医療提供体制が崩壊の瀬戸際まで追い込まれ、回復のメドがつかない中で、来年の改定に向けてどのように調査するか全くイメージできない。スケジュールを議論するのは時期尚早だ」と述べ、関係団体からヒアリングした上での議論を求めた。
有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)も、製薬企業が原薬調達に苦労している現状から、「この問題が流通価格に少なからず影響を与える観点から、談合事案など様々な要因を検討した上でスケジュールを議論すべき」との考えを示した。
医薬品卸代表の村井泰介専門委員(バイタルケーエスケー・ホールディングス社長)は、「ほとんど価格交渉が行われておらず、タイトな交渉が予想される。薬価調査の実施は極めて難しい」と述べた。
一方、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「政府の方針が変わらない限り薬価調査しないとの結論は適切でない。改定するかどうかは別として、実施する場合に備えて制度設計を粛々と進めるべき」と訴えつつ、「今回の調査は通常の状態ではないため、販売側と購入側の実態を踏まえ、暫定的な調査として行うよう検討すべき」との考えも示した。
吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)も通常改定のスケジュールと同様に進めることに賛同しつつ、厚労省と関係団体に対して「どのような方法が実施可能か判断基準を示せるよう事前準備をお願いしたい」と注文をつけた。