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肺動脈性肺高血圧症、患者細胞を用いて薬剤探索用病理モデル作成に成功-岡山大ほか

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2020年05月28日 PM12:15

簡便な肺動脈中膜肥厚モデルがなく、困難だったPAHの薬剤探索

岡山大学は5月26日、指定難病の肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension:PAH)の治療薬開発に応用できる新たな実験法を、三次元培養技術を利用して開発したと発表した。この研究は、同大大学院ヘルスシステム統合科学研究科の狩野光伸教授、大学院医歯薬学総合研究科(薬)の田中啓祥助教らと、国立病院機構岡山医療センターの小川愛子医師と松原広己医師、東北大学の山本雅哉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、スイスの科学雑誌「Frontiers in Bioengineering and Biotechnology」に掲載されている。

PAHは、肺に血液を送る肺動脈の血管内が狭くなることで血液が流れにくくなり、圧が上がることによって、体に酸素を取り込めなくなる難治性疾患。PAHでは、肺動脈中膜肥厚が、肺動脈の血管内が狭くなることに大きく影響していると考えられている。そのため、この肺動脈中膜肥厚を抑える薬物によってPAHの病状悪化を抑制できると考えられる。しかし、これまでに肺動脈中膜肥厚の簡便な試験管内モデルがなかったため、薬剤の探索は困難だった。


画像はリリースより

PAH患者細胞の三次元培養で肺動脈中膜肥厚の再現に成功、薬物の効果判定に有用

今回の研究では、まず、肺動脈中膜肥厚において肺動脈の平滑筋細胞が異常に増加して集まっている状態を、PAH患者の肺動脈平滑筋細胞を三次元的に培養することで、試験管内で再現することに成功した。

また、PAHにおいて肺動脈中膜肥厚を惹起するとされる血液中の因子(血小板由来増殖因子)を、試験管内に構築した肺動脈中膜の三次元培養モデルに加えることで、肺動脈中膜の厚みが増す、肺動脈中膜肥厚を試験管内で再現することに成功した。この試験管内の肺動脈中膜肥厚モデルは、肺動脈中膜肥厚に対する各種薬物の効果判定に用いることができることを示したという。

動脈中膜の肥厚は、PAHだけでなく、肺高血圧症や動脈硬化症など、さまざまな動脈疾患において認められる。今回の研究で確立した技術を基盤とすることで、PAHに加え、各種の動脈疾患の病態解明や治療薬の探索に貢献できると期待される、と研究グループは述べている。

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