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ADHDの重症度に、ドパミンD1受容体と活性化ミクログリアが関与-浜松医大ほか

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2020年05月28日 AM11:45

ADHDの脳内のドパミンD1受容体と活性化ミクログリアとの関係を、PETを用いて調査

浜松医科大学は5月25日、浜松ホトニクス社製頭部Positron Emission Tomography(PET)装置を用いて、注意欠如多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder:)におけるドパミンD1受容体と神経炎症を反映する活性化ミクログリアの変化と両者の相互関係、さらにこれらのPETの結果がADHD症状の重症度と関連することを見出したと発表した。これは、同大精神医学講座(山末英典教授)の横倉正倫助教と同大光尖端医学教育研究センター生体機能イメージング研究室の尾内康臣教授、浜松ホトニクス株式会社中央研究所 PET医用Gの吉川悦次グループ長、GSCCビジネスアクセラレータ画像診断支援Gの二ツ橋昌実専任部員らの共同研究グループによるもの。研究成果は、Nature系医学誌「Molecular Psychiatry」に掲載されている。


画像はリリースより

一般人口の約5%がADHDと診断されることが報告されている。治療薬としては、ドパミンやノルアドレナリンという神経伝達物質系に作用するメチルフェニデートが最も効果があるとされている。しかし、体の成長、心臓、血管への影響のほか、薬を飲み続けるのが困難という点が問題視されており、新しい治療薬が切望されている。

ADHDにはドパミンが関与していることが知られる一方で、脳内の炎症が関与しているとも推測されている。しかし、ドパミンが結合する受容体のサブタイプの中で、ADHDに特徴的な注意や計画性の障害に関連するドパミンD1受容体と、脳内の炎症を担う活性型ミクログリアの関係について、ADHDを対象とした報告はこれまでなかった。一方、動物実験から活性型のミクログリアにドパミンD1受容体が発現していることや、ドパミンD1受容体に働く薬がミクログリアの活性化を抑えることが報告されていた。そこで研究グループは今回、ADHDの背景病態として、ドパミンD1受容体と活性型のミクログリアが相互に関連しているとの仮説を立て、ADHDの脳内のドパミンD1受容体と、活性化ミクログリアとの関係についてPETを用いて調査した。

ドパミンD1受容体の結合能が低いほど落ち着きがなく、活性化ミクログリアの結合能が高いほど素早く正確な作業が困難

研究には、ADHDと診断された24人と定型的な発達を示す24人が参加。PETを用いて参加者の脳内のドパミンD1受容体への結合能(脳内での密度・活性を反映した指標)と活性化ミクログリアへの結合能の変化を調べ、さらにADHDの症状との関係を調べた。

その結果、定型的な発達の人と比べてADHDと診断された人では、脳の中でも注意や感情などのコントロールに重要な役割を持つとされる前部帯状回でドパミンD1受容体の結合能が低下していた。一方で、情報の一時的な保持や計画性に関わる背外側の前頭皮質や、衝動性的な行動のコントロールなどに重要である眼窩前頭皮質では、活性化ミクログリアの結合能が上昇していた。さらに、これらの脳の場所でのドパミンD1受容体と活性化ミクログリアの結合能の変化は、ADHDの重症度に関係していた。具体的には、前部帯状回のドパミンD1受容体の結合能が低いほど落ち着きのなさが顕著で、背外側前頭皮質の活性化ミクログリアの結合能が上昇しているほど素早く正確な作業が困難で、不注意も目立っていた。また、眼窩前頭皮質の活性化ミクログリアの結合能が増加しているほど素早く正確な作業が困難であるという関係も認められた。そして、ADHDの人では、背外側前頭皮質と眼窩前頭皮質でドパミンD1受容体の結合能の変化と、活性化ミクログリアの結合能の変化が、互いに関係していることも判明した。

「ドパミンD1受容体を刺激する薬でミクログリア活性を抑制」という新たな治療法に期待

今回の研究成果により、ドパミンD1受容体と活性化ミクログリアがADHD症状の重篤さに関わっていることが判明した。さらに、両者の相関関係はADHDの人だけに見出されることも明らかになった。このことから、「ドパミンD1受容体を刺激する薬でミクログリア活性を抑える」という、新しい治療法の開発につながることが期待される。

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