滞っている消化器系の診断・治療を安全に行うため、感染防御システム開発へ
香川大学は5月26日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染防御を目的とした、消化器内視鏡および腹部超音波手技下のSARS-CoV-2伝播を最小限に抑える為の患者シールド法を開発したと発表した。この研究は、同大医学部消化器・神経内科学正木勉教授の教室員である小原英幹講師、西山典子臨床講師(西山脳神経外科病院消化器内科)、谷丈二学内講師らの研究グループによるもの。研究成果について、胃内視鏡は「Digestive Endoscopy」誌、大腸内視鏡は「Endoscopy」誌、腹部超音波は「Digestive and Liver Disease」誌に掲載される予定。
現在、SARS-CoV-2が世界で蔓延し、健康問題だけでなく、生活様式の劇的な変化が社会的問題となっている。感染を防ぐことが最も大切であるため、治療を急がない疾患の検査、例えば内視鏡、腹部超音波などの検診に関しては、ほぼ止まっている。検査による医療従事者への伝染の危険性と、それによる病院内のクラスターを作る危険性があるため、コロナ収束を待っても再開の時期が不透明な状況に変わりはない。
一方で、SARS-CoV-2診療とは関係なく、がんに罹患する患者がいるが、がん検診による早期発見・早期治療の機会が失われている。今回、研究グループは、滞っている消化器系の診断・治療を安全に行うために、安価で、個人医院などを含めたどの施設においても実施可能なSARS-CoV-2感染防御システムの開発に取り組んだ。
画像はリリースより
大腸内視鏡では、おむつパンツと腹部超音波用のプローブカバーを利用
消化器系手技下での患者から排出されるエアロゾル飛散を抑えるために重要なことは、対象をボックス化し、陰圧化することだ。今回、胃内視鏡と腹部超音波手技においては、同一のコンセプトでエアロゾル持続吸引による使い捨てビニールボックスを用いた患者被覆法を考案。ボックス内に持続吸引チューブを挿入しておくことでボックスの陰圧化に成功したという。大腸内視鏡においては、おむつパンツと腹部超音波用のプローブカバーを利用した飛散シールド法を考案した。ウイルスを含む便汁は液体吸収性の高いおむつにより吸収され、肛門から出るエアロゾルは、内視鏡を被覆したプローブカバーにより密封化される。これらは、すべて外部に漏れなく簡単に一包化し破棄できることもメリットだとしている。
研究グループは、「身近な備品を活用することでウイルスの飛散、室内でのエアロゾル充満を最小限に防ぐ方法が完成した」とコメント。また、今回開発した患者シールド法は、医療従事者のみならず、がん診療の早期再開・維持による患者の健康を守ることへの貢献や、消化器系の検査や処置だけでなく、検査・処置を扱うすべての診療科に役立つことが期待される、と述べている。
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