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【AMED】「AI創薬」の本格実装へ-今年度から新プロジェクト

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2020年05月27日 AM10:15


■産学で最適化合物提案

)は、人工知能()技術を活用した「次世代創薬AI」の開発に向け、今年度からプロジェクトを開始する。製薬企業からの低分子創薬に関連したデータの提供を受け、新規化合物を設計する際にAIが生体分子に対する親和性を予測し、創薬標的蛋白質に合った最適な化合物構造を提案するシステムを産学協同で開発する。プロジェクトが終了する5年後に実用化し、大学やベンチャー研究者に対して無償でシステムを提供する方向だ。大学やベンチャーから製薬企業へのシーズ橋渡しを支援し、日本でAI創薬の本格実装を目指す。

新薬開発に多くの人手と資金、時間が必要とされる中、創薬プロセスにおいてAIを導入する動きが加速している。創薬標的蛋白質に対する化合物の構造多様性が広がり、従来の化合物スクーリングでは創薬が難しくなっているためだ。

創薬初期段階では、AIや機械学習アルゴリズムを用いて薬効や副作用を予測することが必須となるが、AIの解析には創薬に関連した大量のデータが必要になる。海外では一般公開されていた化合物データベースが相次いで閉鎖されており、AIの予測精度を高める必要なデータを取得できない状況にある。

こうした状況を踏まえ、AMEDは、日本製薬工業協会の化合物情報共有コンソーシアムとの連携を通じて、AI創薬の共通基盤構築を推進する。製薬各社が創薬研究の過程で蓄積してきたデータを共有し、企業やアカデミアが利用可能なプラットフォームにしたい考えである。

2015~19年度までに実施した先行事業では、薬物動態や心毒性、肝毒性に関する情報を集約した創薬支援インフォマティクスデータベースを構築して、特定の化合物構造から薬物動態や毒性のプロファイルを予測できるモデルを開発した。

今年度からは、より広範なデータが製薬企業から提供され、それをもとに化合物と生体分子の親和性について多指標で予測できるシステムの開発を目指す。製薬企業からは化合物と生体分子のデータを、大学研究者からは研究アイデアを提供してもらい、創薬標的分子群と薬物動態・毒性関連分子群を合わせた50程度の生体分子群に対する化合物親和性を同時に予測できるようにする。将来的には、代謝や薬効の予測にもつなげる。

創薬標的蛋白質に応じて、AIが最適な化合物構造を提案するシステムも並行して開発する計画だ。製薬企業からは化合物情報に加え、研究者が持つ化合物最適化の経験知を収集、統合し、その学習成果をもとに構造の新規性や合成のしやすさなども考慮した形で化合物構造を発生させる。

二つのシステムを組み合わせることで、化合物最適化にかかる時間や費用、人手などを大幅に削減する。開発したシステムについては参加企業に提供することで、製薬企業内の研究開発に活用してもらう。

AMEDは、アカデミア発シーズを製薬企業に橋渡しする創薬ブースター事業を運営しており、今回のプロジェクトもその一環となっている。高価なAI創薬システムの導入に躊躇していたアカデミア研究者が多い中、無償でシステムを提供する方向だ。

創薬戦略部創薬企画・評価課の知場伸介課長は「日本で産学が自由に利用できるAI創薬のシステムは現段階では存在していない。来年度には試作品を完成し、他の創薬ソフトウェアにはない特徴的な使い方ができるよう実用化を目指したい」と話す。

海外では、製薬大手を中心にAI創薬のシステムを構築する動きがあるが、知場氏は「違う切り口でプラットフォームを構築することができれば、連携は可能ではないか」との考えを示している。

 

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