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新型コロナの新規診断法を開発、PCR法より迅速かつ簡便に診断-東京医科大ほか

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2020年05月18日 PM12:00

高感度かつ特異性の高い、簡易で安価な迅速診断方法の開発を目指して

東京医科大学は5月14日、PCR法より短時間で簡便に、(SARS-CoV-2)感染の有無を知ることのできる診断法の確立に成功したと発表した。この研究は、同大小児科・思春期科学分野の河島尚志主任教授と日本大学文理学部化学科の桑原正靖教授らの研究グループによるもの。2020年5月11日付で、「新型コロナウイルスSARS-CoV-2の検出キットおよび検出方法」として特許出願されている。

中国から発生したSARS-CoV-2による新型コロナウイルス感染症()は、全世界に拡大し、死亡率は決して低くない状況だ。未発症者や潜伏期間にある感染者からの感染拡大が、感染制御の上で大きな問題となっている。また、発症時は軽症から中等症であっても、突然重症化し、生命予後を左右する場合もある。

インフルエンザはすでに多くの迅速キットが市販され、一般外来において簡便迅速に診断可能となっている。臨床使用されているインフルエンザの迅速診断キットの検出原理は、ウイルス抗原とその抗体の特異的結合反応に基づくもの。COVID-19は検体に含まれているウイルス量が少なく、現在用いられているウイルス検出方法はPCR法だ。この方法は、サーマル・サイクラー(高速温度制御装置)を用い、複数のプライマーセットを用いた逆転写リアルタイムPCR法であり、信頼性の高い測定を行うことが可能となっている。しかし、この方法においては、検査の判定に専用機器が必要であり、一般外来で検査を行うことは困難で、迅速性はない。今後は、感染患者だけでなく接触者や海外渡航者等の幅広いスクリーニングにも適用できるような、高感度かつ特異性の高い、なおかつ簡易で安価な迅速診断方法の開発が急務だ。


画像はリリースより

SATIC法を用いて、特定遺伝子を最終的にナノ磁性ビーズの凝集の有無により可視化し判定

今回、研究グループが開発した診断法は、核酸(DNAやRNA)の抽出が不要であり、新しい革新的核酸増幅法(SATIC法)を用いることで、がんや生活習慣病に関わる遺伝子や細菌やウイルスのゲノム等の特定遺伝子を、最終的にナノ磁性ビーズの凝集の有無により可視化し判定する方法だ。

同診断法を用いた場合、サンプル中に10コピー程度しかないごく微量のウイルスを検出することが可能であり、きわめて高感度であることを確認したという。また、臨床検体として、既存のPCR法で陽性と判定された咽頭・鼻腔ぬぐい綿棒、唾液、喀痰を用いた結果、すべての検体で検出可能だった。健常者やインフルエンザ患者からの検体は全例、陰性だったという。

約20~25分で検査終了、陽性陰性の判定は目視で十分に可能

検査は約20~25分で終了し、陽性陰性の判定は目視で十分に可能。偽陽性は極めて少ないという結果を得たという。25分以上経過した場合、さらに、陽性陰性の差が明瞭となった。臨床検体において、感染回復期からのウイルス学的動態では、鼻腔ぬぐい液でPCR陰性と判定されている患者の喀痰から長期に陽性であることも見出した。

これらの結果から、研究グループは同診断法について、偽陽性反応等の非特異反応がなくPCR法と同等の高感度をもつため、現行のPCR検査に代わりうる方法だとし、また、鼻咽頭ぬぐいの綿棒だけでなく唾液や喀痰からの検出が可能であるため、検体採取に伴う医療従事者の感染の危険性が限りなく低減され、唾液の場合は患者本人による検体採取も可能、と述べている。

同診断法の活用により、迅速かつ簡便にCOVID-19感染者の診断・隔離が行われるようになり、国民全体における感染者動向をタイムリーに把握できるという公衆衛生学的利点とともに、早期診断による重症化予防対策や、新たに開発される治療薬の早期投与も可能となる可能性があるという。また、病院や高齢者施設における集団感染を抑制し、感染者動向を基礎データとして必要とされる医療体制を計画的に確保することにより、医療関係者の負担を軽減し医療崩壊を防ぐことも期待される。

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