医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 新型コロナを次亜塩素酸水が「短時間」で「強力」に不活化することを証明-帯広畜産大ほか

新型コロナを次亜塩素酸水が「短時間」で「強力」に不活化することを証明-帯広畜産大ほか

読了時間:約 3分10秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年05月15日 PM12:30

次亜塩素酸水の新型コロナウイルス不活化活性、溶液の酸性pHでなく「含有遊離塩素濃度」に依存

帯広畜産大学は5月14日、次亜塩素酸水が短時間で強力に新型コロナウイルス()を不活化することを証明し、また、次亜塩素酸水の新型コロナウイルス不活化活性は溶液の酸性pHではなく、含まれる遊離塩素濃度に依存することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大獣医学研究部門の小川晴子教授およびグローバルアグロメディシン研究センターの武田洋平特任助教らと、株式会社アクトの研究グループによるもの。研究成果は、学術雑誌に投稿中だとしている。

SARS-CoV-2は2019年12月に中国・武漢で最初の感染例が報告されて以降、全世界に広がり2020年3月11日には世界保健機関(WHO)によるパンデミック宣言がなされた。その後も感染は拡大し、2020年5月現在において、感染者数は350万人にのぼり、24万人以上の死亡が報告されている。このような状況下で、容易に実施可能かつ効果的と考えられるウイルス感染防御対策のひとつとして、消毒薬によるウイルスの不活化が挙げられる。すでにアルコール消毒薬が効果的にSARS-CoV-2を不活化可能であることは科学的に証明されているが、長期におよぶパンデミック状況下で、これらアルコール消毒薬の供給不足が懸念されている。

そこで研究グループは、アルコール消毒薬の代替となり得る消毒薬の候補として、ウイルスを含む多種の病原体に対する不活化効果が報告されている次亜塩素酸水に着目。今回の研究は、株式会社アクトの製品である三室型電解装置クリーン・ファインにより作製された無塩型次亜塩素酸水クリーン・リフレのSARS-CoV-2に対する不活化効果を評価した。この無塩型次亜塩素酸水の特徴は、有塩型のものと比べて消毒効果の持続時間が長いことだ。なお、SARS-CoV-2(JPN/TY/WK-521株)は国立感染症研究所より供与を受けた。


画像はリリースより

タンパク質を多く含むウイルス液に対しては、少ない液量のEWではウイルスを完全に不活化できず

まず、(=酸性電解水:EW)のSARS-CoV-2に対する不活化活性を評価。ここでは、pH2.5、含有遊離塩素(FAC)濃度74mg/LのEWを用いた。この実験では、ウイルス液とEWを1:9の比率で混合し1分間室温で反応させ、その後ウイルス力価(=感染性を有するウイルスの残存量)をTCID50法により算出した。この時、EWとの比較として、ウイルス不活化活性を有さない滅菌蒸留水(DDW)をウイルス液と混合した対照群を置いた。実験の結果、EWは1分の反応時間で99.99%以上のSARS-CoV-2を不活化し、感染性を有する残存ウイルス量は検出限界以下となっていた。

次に、EWのウイルス不活化活性が溶液の酸性pHに依存するか否かを評価した。この実験では、中性のリン酸緩衝液(PBS)やEWに加え、塩酸を加えてpHが酸性になるように調整したPBSをそれぞれウイルス液と混合し、1分間反応後の残存ウイルス量を評価。実験の結果、1分の反応時間では、単にpHを下げただけの酸性PBSはウイルスを全く不活化しなかった。このことから、EWのウイルス不活化活性は溶液の酸性pHに依存していないことが示された。

続いて、EW中の含有FAC濃度がウイルス不活化活性に及ぼす影響を評価した。この実験では、電解装置で作製した直後の高濃度のFACを含むEW、および作製後に容器のキャップをせずに室温で17日間静置しFAC濃度を低下させたEWをそれぞれウイルス液と混合し、1分間反応後の残存ウイルス量を評価。実験の結果、EWのウイルス不活化活性は含有FAC濃度依存的に低下することが示された。なお、これらの結果に加え、タンパク質を多く含むウイルス液に対しては、少ない液量のEWはウイルスを完全に不活化できない一方、十分量のEWを用いればウイルスを検出限界以下まで不活化可能であることが示されたという。

「使用の際は十分な液量を用いる」などの対策が望ましい

今回の研究結果より、次亜塩素酸水は含有FAC濃度依存的にSARS-CoV-2を短時間で強力に不活化可能であることが示された。しかし同時に、長期間開放状態で室温放置され塩素濃度が低下した次亜塩素水ではウイルス不活化活性が低下すること、また、タンパク質を豊富に含むウイルス液の不活化には十分量の次亜塩素酸水が必要であることも明らかとなった。これらの研究結果により、次亜塩素酸水のSARS-CoV-2に対する消毒薬としての有用性が示されたとしている。

より効果的な消毒作用を維持・発揮させるために、研究グループは「適切に保管し(密栓し冷暗所での保管を推奨)、かつ作製後長期間経過したものの使用は避ける」「使用の際は十分な液量を用いる」「極度に汚れている場所や手指の消毒の際には、次亜塩素酸水を用いた複数回の拭き取りや洗浄を実施する」などの対策が望ましいとしている。また、今回の研究で用いた無塩型次亜塩素酸水は適切な保管方法で長く活性を維持できるため、作製後の遠隔地への供給・使用にも適しており、現在の深刻な新型コロナウイルス蔓延防止への寄与が期待される、と述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 白血病関連遺伝子ASXL1変異の血液による、動脈硬化誘導メカニズム解明-東大
  • 抗がん剤ドキソルビシン心毒性、ダントロレン予防投与で改善の可能性-山口大
  • 自律神経の仕組み解明、交感神経はサブタイプごとに臓器を個別に制御-理研ほか
  • 医学部教育、情報科学技術に関する13の学修目標を具体化-名大
  • 従来よりも増殖が良好なCAR-T細胞開発、治療効果増強に期待-名大ほか