厚生労働省は13日、富士レビオが申請した新型コロナウイルス感染症抗原検査キット「エスプラインSARS-CoV-2」を体外診断用医薬品として製造販売することを承認した。約30分で体内に同ウイルスの抗原があるかどうかを判定でき、4~6時間かかるPCR検査を行わなくても確定診断が可能となる。ただ、PCR検査よりも感度が劣るため、陰性と判定された場合はPCR検査を行うなど、当面は両検査を併用する方針。検査実施による患者の費用負担は発生しない。厚労省は、新規感染者数が多い5都道府県の帰国者・接触者外来などに優先的に配布する考え。
この検査キットは、新型コロナウイルスの蛋白質である抗原の検出を目的としたもの。患者の鼻腔の奥から採取した粘膜を検体とし、検体を含んだ液体をカセット中央にたらすことで、約30分後に判定ラインの有無で陽性か陰性かを判定できる仕組みとなる。
国内の検査検体124例を用いたPCR検査との比較試験では、陰性は100例中100例(100%)一致し、陽性は24例中16例(66.7%)だった。この結果などを踏まえ、厚労省は、検査キットを「PCR検査と比べて感度は低いが、一定の症状を持つ患者に対して陽性判定をもとに感染診断を行うことの臨床的有用性が期待できる」と位置づけた。
ただ、承認時のデータが極めて限定的なため、製造販売後に臨床性能の評価試験を実施すること、安定性試験を行うことを承認条件として課した。
実際の検査では、医師が感染疑いがあると判断した人に使用し、PCR検査の結果とは別枠で保健所に報告する。陰性と判定された場合は、医師の判断でPCR検査を行う必要があり、当面は抗原検査とPCR検査を併用するとしている。
また、感染防止策を徹底している施設で使用することとし、全国の帰国者・接触者外来、特定機能病院、救急救命センターが対象となる。配布時期については、速やかに供給できるよう富士レビオと調整しているとした。同社は今月中に40万回分のキットを製造する見通し。
一方、キットの保険適用は、600点で算定することが同日の中央社会保険医療協議会総会で了承された。即日適用され、新型コロナウイルスの感染が疑われる人に対する診断を目的に行った場合に算定できる。検査実施による患者の費用負担については公費負担としている。