運動の改善確認し、主要評価項目達成
スイスのエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社は4月28日、リスジプラムについて、症候性のI型脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)の乳児(1~7か月)を対象に評価した、グローバルなピボタル試験であるFIREFISH試験のパート2における1年間の成績を発表した。今回の成績は、第72回米国神経学会(AAN)に採択され、数週間以内に、対面式の代替としてバーチャルプレゼンテーションがオンライン上に公開される予定だ。
FIREFISH試験は、I型SMAの乳児(1~7か月)を対象とした、2パートからなる非盲検単群の第2/3相試験。パート1(21人)では、パート2における至適用量を検討。パート2(41人)では、BSID-III(Bayley Scales of Infant and Toddler Development-Third Edition)の粗大運動スケールで評価した、投与開始12カ月時点における、最低5秒間、支えなしで座位が保持可能な乳児の割合を主要評価項目として、有効性を評価した。
同試験の結果、BSID-IIIの粗大運動スケールで評価した、投与開始12か月時点における、最低5秒間、支えなしで座位が保持可能な乳児の割合は29%(12/41、p<0.0001)であり、主要評価項目を達成した。なお、自然歴で同マイルストンを達成したI型SMAの乳児は、確認されていない。また、HINE-2(Hammersmith Infant Neurological Examination Module 2)の評価で、首がすわるようになったのが18人(43.9%)、横に転がることができるようになったのが13人(31.7%)。同様に、補助により立位を取ることができたのが2人(4.9%)だった。リスジプラムの安全性はこれまでに認められている安全性プロファイルと同様だったという。
乳児の93%が生存し、85.4%がイベント未発生
解析時点の治療期間は15.2か月(中央値)、年齢は20.7か月(中央値)だった。乳児の93%(38/41人)が生存し、85.4%(35/41人)がイベント未発生だった。未治療の自然歴コホートでは、死亡または永続的人工呼吸器を必要とした乳児の年齢は13.5か月(中央値)だった。3人の乳児が治療後3か月以内に致命的な疾患の合併症を経験。治験責任医師はこれらの合併症に対するリスジプラムとの関連性を認めていない。また、90%(37/41人)の乳児でCHOP-INTENDスコアが少なくとも4ポイント、56%(23/41人)で40ポイント以上まで改善。中央値では20ポイントの改善だった。未治療では、I型SMAの乳児のCHOP-INTENDスコアは時間の経過とともに低下した。
リスジプラムは、中枢神経系および全身のSMNタンパク質レベルを増加するように創製された、経口投与が可能な臨床開発中の薬剤。運動神経および筋肉機能をサポートするために、SMN2遺伝子から機能性のSMNタンパク質の産生が増加するように設計されている。2018年12月には欧州医薬品庁(EMA)より、SMAの治療薬としてPRIME(PRIority MEdicines)指定を受けている。欧州、米国およびスイスではオーファンドラッグ指定を受け、また米国食品医薬品局(FDA)よりファストトラック指定を受けた。日本では、2019年3月に希少疾病用医薬品指定を受けている。
SMAは遺伝性の神経筋疾患であり、脊髄の運動神経細胞の変性によって筋萎縮や筋力低下を示す。乳幼児では最も頻度の高い、致死的な遺伝性疾患だ。乳児期から小児期に発症するSMAの患者数は10万人あたり1~2人とされている。SMAの原因遺伝子はSMN遺伝子で、SMN1遺伝子の機能不全に加え、SMN2遺伝子のみでは十分量の機能性のSMNタンパク質が産生されないため発症する。
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