医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 先天性疾患対象、乾燥ろ紙血からのタンパク質検査に有用な分析法を開発-かずさDNA研

先天性疾患対象、乾燥ろ紙血からのタンパク質検査に有用な分析法を開発-かずさDNA研

読了時間:約 1分34秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年05月12日 PM12:30

先天性疾患スクリーニングに利用されるDBSから疾患関連タンパク質を直接検出できるか?

かずさDNA研究所は5月11日、乾燥ろ紙血(DBS)由来の検体に対して炭酸ナトリウム沈殿(SCP)を行うことにより、疎水性タンパク質を濃縮すると同時に、DBSに大量に含まれている親水性タンパク質を簡便かつ効率的に除去できることを見出したと発表した。この研究は、同研究所の研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Proteome Research」に掲載されている。

多くの先天性疾患の診断では、原因となる遺伝子の翻訳領域の変異を調べる。しかし、その遺伝子の発現に影響しmRNAやタンパク質の量に大きな変化をもたらす可能性のある発現制御領域などは未解明な場合が多く、遺伝子検査の対象となっていない。発現量の違いが疾患の原因となっている可能性もあることから、原因遺伝子のmRNAもしくはタンパク質の発現量を調べる検査が求められている。

今回、研究グループは、先天性疾患のスクリーニングなどに広く利用されているDBSから疾患に関与する多くのタンパク質を直接検出できるかを試みた。DBSにはヘモグロビン、アルブミン、グロブリンなどの親水性タンパク質が大量に含まれており、これらのタンパク質が微量なタンパク質の検出を妨げることが知られている。

DBSに含まれる1,977種類のタンパク質を同定し、585種類の疾患関連タンパク質を確認

今回の研究では、DBS由来の検体に対してSCPを行うことにより、疎水性タンパク質を濃縮すると同時に、DBSに大量に含まれている親水性タンパク質を簡便かつ効率的に除去できることを見出したという。さらに、最新鋭の液体クロマトグラフィー連結型質量分析計(LC-MS/MS)と最先端のデータ非依存型解析法(DIA)を組み合わせることにより、DBSに含まれる1,977種類のタンパク質を同定することに成功。これらのタンパク質には、ヒトの遺伝子変異と遺伝病のデータベースであるOnline Mendelian Inheritance in Man(OMIM)に登録されている585種類の疾患関連タンパク質が含まれていた。

今回の研究で開発したシステムにより、タンパク質一斉解析(プロテオーム解析)の感度と定量限界を拡大することが可能となった。このシステムを、新生児などの先天性疾患の検査に応用することで、これまでの検査で見落としていた疾患について、発症の予防と早期治療が可能になることが期待される、と研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 視覚障害のある受験者、試験方法の合理的配慮に課題-筑波大
  • 特定保健指導を受けた勤労者の「運動習慣獲得」に影響する要因をAIで解明-筑波大ほか
  • 腎疾患を少ないデータから高精度に分類できるAIを開発-阪大ほか
  • ジャンプ力をスマホで高精度に計測できる手法を開発-慶大ほか
  • I型アレルギーを即座に抑制、アナフィラキシーに効果期待できる抗体医薬発見-順大ほか