先天性疾患スクリーニングに利用されるDBSから疾患関連タンパク質を直接検出できるか?
かずさDNA研究所は5月11日、乾燥ろ紙血(DBS)由来の検体に対して炭酸ナトリウム沈殿(SCP)を行うことにより、疎水性タンパク質を濃縮すると同時に、DBSに大量に含まれている親水性タンパク質を簡便かつ効率的に除去できることを見出したと発表した。この研究は、同研究所の研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Proteome Research」に掲載されている。
多くの先天性疾患の診断では、原因となる遺伝子の翻訳領域の変異を調べる。しかし、その遺伝子の発現に影響しmRNAやタンパク質の量に大きな変化をもたらす可能性のある発現制御領域などは未解明な場合が多く、遺伝子検査の対象となっていない。発現量の違いが疾患の原因となっている可能性もあることから、原因遺伝子のmRNAもしくはタンパク質の発現量を調べる検査が求められている。
今回、研究グループは、先天性疾患のスクリーニングなどに広く利用されているDBSから疾患に関与する多くのタンパク質を直接検出できるかを試みた。DBSにはヘモグロビン、アルブミン、グロブリンなどの親水性タンパク質が大量に含まれており、これらのタンパク質が微量なタンパク質の検出を妨げることが知られている。
DBSに含まれる1,977種類のタンパク質を同定し、585種類の疾患関連タンパク質を確認
今回の研究では、DBS由来の検体に対してSCPを行うことにより、疎水性タンパク質を濃縮すると同時に、DBSに大量に含まれている親水性タンパク質を簡便かつ効率的に除去できることを見出したという。さらに、最新鋭の液体クロマトグラフィー連結型質量分析計(LC-MS/MS)と最先端のデータ非依存型解析法(DIA)を組み合わせることにより、DBSに含まれる1,977種類のタンパク質を同定することに成功。これらのタンパク質には、ヒトの遺伝子変異と遺伝病のデータベースであるOnline Mendelian Inheritance in Man(OMIM)に登録されている585種類の疾患関連タンパク質が含まれていた。
今回の研究で開発したシステムにより、タンパク質一斉解析(プロテオーム解析)の感度と定量限界を拡大することが可能となった。このシステムを、新生児などの先天性疾患の検査に応用することで、これまでの検査で見落としていた疾患について、発症の予防と早期治療が可能になることが期待される、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・かずさDNA研究所 ニュース