第III相試験では日本を含めた世界各国180施設を対象に重症患者に対するレムデシビル静脈内投与の有効性・安全性を検討している。同試験と並行して実施されている医師主導治験では、レムデシビル10日間投与による有効性が検討されているが、ギリアドでは最適な投与期間を確認するため、10日間の投与期間を5日間に短縮した場合に同等の有効性が得られるかを評価した。
今回、第III相試験の一部として肺炎の所見があり、人工呼吸器非使用の酵素飽和度の低下が見られる患者397人を解析した。標準治療への上乗せ治療としてレムデシビル5日間投与群と10日間投与群に割り付け、退院、人工呼吸器・体外式膜型人工肺(エクモ)などの必要性、死亡など七つの段階に臨床指標を定義し、試験開始の評価スケールから2段階以上改善したものを臨床的改善として両群を比較した。
その結果、臨床的改善が患者の50%に認められるまでの期間は、5日間投与群が10日、10日間投与が11日となり、両群とも半数以上の患者が14日目までに退院した。投与開始から第14日には、5日投与群の64.5%、10日投与群の53.8%が酵素療法と治療が不要になるか、退院に至る臨床的回復に到達していた。死亡は5日間投与群が8%、10日間投与群が11%だった。
安全性については、5日間投与群の71%、10日間投与群の74%に有害事象が確認されたが、重篤な薬剤関連有害事象は両群ともに2%、投与中止に至った有害事象は5日間投与群が5%、10日間投与群が10%となった。
今回の試験結果について、同社は「一部の患者では5日間の治療を受けられる可能性を示している」と評価しており、米国立アレルギー感染症研究所が実施中のレムデシビルのプラセボ対照試験を補完するデータとして役立てたい考え。
今後、重症患者を対象に人工呼吸器の使用例を含む5600人まで追加登録し、第III相試験を拡大する予定。中等度の新型コロナウイルス感染症患者についても、標準治療にレムデシビルの5日間投与と10日間投与の上乗せ効果を検討する第III相試験が進行中で、今月末に600人を対象とした結果が得られる見込み。
現時点で同剤が承認されている国はないが、厚生労働省が通常より早期に承認する「特例承認制度」を適用する方針を示している。