ジペプチドTyr-Proの脳器官への蓄積は記憶機能に影響?
九州大学は5月1日、血液脳関門を透過し脳組織へと到達するジペプチドの摂取が、急性アルツハイマー病モデルマウスでの記憶障害を改善することを明らかにしたと発表した。これは、同大大学院農学研究院/五感応用デバイス研究開発センターの田中充助教、松井利郎教授らの研究グループと、福岡大学薬学部道具伸也准教授らとの共同研究によるもの。研究成果は、英科学誌「Nature Partner Journals Science of Food」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
超高齢化社会において深刻な問題となりつつある認知症に対し、未だ的確な治療薬が開発されていないことから、発症前段階で予防策を講じることが重要と認識されている。松井教授らの研究グループはこれまでに、アミノ酸が2つ(Tyr-Pro)つながったジペプチドが、血液脳関門を通過し、海馬、視床下部や小脳といった脳器官周辺に蓄積することを明らかにしている。ジペプチドが海馬や視床下部などの脳器官に蓄積することは、行動や記憶機能に何らかの効果を示すのではと期待されていた。
ジペプチドを摂取でアルツハイマー病モデルマウスの記憶障害を改善
今回の研究で、アミロイドβペプチド25-35を脳内に投与することにより、急性的に誘導したアルツハイマー病モデルマウスを用いて、Tyr-Proを2週間毎日経口摂取させることにより、Y迷路試験での短期記憶障害を改善する作用、ならびに受動回避試験での長期記憶障害を改善する作用が確認された。この結果は、ジペプチドの摂取が記憶障害の改善に有効であることを動物レベルで実証したものであり、食品摂取による認知症予防の可能性を示すという。
今後研究グループは、老化促進マウスを用いて、未病段階での改善作用を明らかにし、食(ジペプチド)による認知予防効果を明らかにするとともに、より効果の高いペプチドを明らかにし、認知症改善作用のメカニズムについても追究していく予定だ。「これらの成果によって、脳の健全性維持や脳疾患予防に貢献できる機能性食品の登場が大いに期待される」と、研究グループは述べている。
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