臨床的改善度、10日間投与群と5日間投与群で同程度
米ギリアド・サイエンシズ社は4月30日、開発中の抗ウイルス薬remdesivirについて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症入院患者を対象に、同剤の5日間投与と10日間投与を評価した非盲検第3相試験(SIMPLE試験)の主要結果を発表した。同社は、今後、数週間以内に同試験の詳細データを査読論文誌に発表する予定だ。
remdesivirは、エボラウイルス、マールブルグウイルス、MERSウイルス、SARSウイルスなど、複数種類の新興感染症病原体に対し、in vitroと動物モデルを用いた試験の両方で広範な抗ウイルス活性が認められている、開発中の核酸アナログ。ギリアド社が実施したin vitro試験において、remdesivirはCOVID-19の原因ウイルスに対し抗ウイルス活性を示している。COVID-19におけるremdesivirの安全性と有効性は、複数の第3相臨床試験において評価中。現在、世界のいずれの国・地域でも認可・承認されておらず、COVID-19治療薬としての安全性と有効性は立証されていない。
SIMPLE試験は、remdesivirの投与期間を短縮して5日間とした場合にも、現在実施中の複数の臨床試験で検討されている10日間投与で得られる結果と同様の有効性が得られるかどうかを検討する目的で実施。各群の有害事象発現率や臨床効果の評価指標の追加検討も、副次的な目的とした。試験参加時点で肺炎の所見を示し、酸素飽和度の低下がみられるものの、人工呼吸器を必要としない患者が試験に参加。臨床的改善は、試験計画書に示した7段階スケール(退院~酸素療法の必要性~死亡)でベースラインからの2段階以上の改善がみられることと定義した。臨床的回復は、酸素療法と治療が不要となるか、退院に至ることとした。
試験の結果、臨床的改善が患者の50%に認められるまでの期間は、5日間投与群では10日、10日間投与群では11日だった。両群とも、半数以上の患者が第14日までに退院した(5日投与群:60.0%, n=120/200 vs.10日投与群:52.3%, n=103/197; p=0.14)。第14日には、5日投与群の64.5%(n=129/200)、10日投与群の53.8%(n=106/197)が臨床的回復に到達。臨床転帰は、地域により異なったという。イタリア以外では第14日時点の死亡率は両群あわせて7%(n=23/320)、第14日時点で臨床的改善がみられた患者の割合は64% (n=205/320)であり、61%(n=196/320)が退院した。
発症後10日以内投与は、発症後11日以降投与と比べ転帰が良好
探索的解析において、発症後10日以内にremdesivirの投与を受けた患者では、発症後11日以降に投与を受けた患者に比べ、転帰が良好だった。両治療群のデータをあわせて解析した結果、第14日までに退院した患者の割合は、発症後10日以内に治療を開始した患者では62%、発症後11日以降に開始した患者では49%となった。
remdesivirの忍容性は、5日間投与群、10日間投与群ともおおむね良好だったという。患者の10%以上に認められた有害事象は、悪心(5日間投与群:10.0%, n=20/200 vs. 10日間投与群:8.6%, n=17/197)と急性呼吸不全(5日間投与群:6.0%, n=12/200 vs. 10日間投与群:10.7%, n=21/197)。グレード3以上の肝酵素(ALT)上昇は患者の7.3%(n=28/385)で認められ、3.0%(n=12/397)は肝酵素上昇のためremdesivirの投与を中止した。
▼関連リンク
・ギリアド・サイエンシズ株式会社 プレスリリース