新たな殺菌方法として期待のUVCランプ、抗体医薬品に照射した場合の影響は?
大阪大学は4月17日、抗体医薬品に紫外線照射を行うことで、タンパク質を構成するアミノ酸の一種「ヒスチジン」が構造変換されるメカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院工学研究科の内山進教授、薬学研究科の大久保忠保教授、宮原佑弥大学院生(薬学研究科博士後期課程)、奈良女子大学の中沢隆教授、パナソニック株式会社らの研究グループによるもの。研究成果は、米国科学誌「Scientific reports」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
従来、紫外線を照射するとタンパク質が分解されることやアミノ酸が他のアミノ酸に変化することは知られており、光照射は、微生物の殺菌などの目的で使用されてきた。特に、従来の光源よりエネルギーの強いUVC(Ultra Violet-C)ランプは、より効率的な殺菌・消毒の方法として医薬品製造の場での利用が期待されている。
抗体医薬品は、遺伝子組換えや細胞培養などのバイオテクノロジーを利用して製造されたバイオ医薬品の一種。有効成分はタンパク質であり、がんや自己免疫疾患などの治療で用いられる。これまで、抗体医薬品にUVCを照射した際の、アミノ酸の構造変化メカニズムは明らかになっていなかった。
UVC照射で変換されるアミノ酸を特定、抗体医薬品に照射する際の影響が明確に
今回研究グループは、抗体医薬品にUVCを照射し、質量分析法と酸素の安定同位体である18O水を用いた実験により、ヒスチジンが中間体を経てアスパラギンおよびアスパラギン酸に変換されるメカニズムを解明した。
今回の研究成果により、抗体医薬品において有効性および安全性に影響を及ぼすアミノ酸変換のメカニズムが明らかとなった。この研究成果は今後、医薬品製造の場において、UVC照射による殺菌、ウイルスの不活化などの用途で使用する際の、抗体医薬品への影響を評価する上で有益な情報となる、と研究グループは述べている。
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