日本医師会の釜萢敏常任理事(感染症危機管理対策担当)は22日の記者会見で、楽天が法人向けに販売している新型コロナウイルスPCR検査キットについて、「現場に大きな混乱をもたらす」と強い懸念を示した。実際には陽性にも関わらず陰性と判定されるおそれや、検体採取時に感染拡大することなどを問題視した。同様の製品が相次ぐことを防ぐため、規制の構築に向けて厚生労働省と協議する考えも示した。
日医が問題視したのは、楽天が出資するジェネシスヘルスケアが製造し、楽天が首都圏の法人向けに20日から販売している「新型コロナウイルスPCR検査キットCOVID-19PCR」。同ウイルスに特徴的なRNA配列が含まれているかどうかを判定できるとしている。
使用方法は、購入した企業等がキットを従業員に配布後、自宅で検体を採取し、付属の容器に入れる。容器を封筒で密封後、専用の回収ボックスに入れ、ジェネシスヘルスケアが回収してから3日以内をメドに結果が通知されるというもの。
37.5℃以上の発熱が4日以上続くなど、厚労省が示す相談・受診の目安に挙げられた症状が見られる人は使用できず、同社はキットについて「医療用の検査ではない」としている。5月以降に販売対象地域を拡大する考えを示している。
釜萢氏は、この検査キットについて、検体採取時に感染拡大する危険性があること、実際は陽性にも関わらず陰性と誤って判定される可能性があること、個人情報の取り扱いなど複数の問題点を指摘。
その上で、「検査数が少ないことに対する一つの解決法として提示したものと思うが、現場に大きな混乱をもたらす可能性がある。キットを企業が購入して、実施することは非常に大きな問題」との考えを示した。
さらに、同様の製品が続出することを防ぐ規制も必要との認識を示し、「厚労省としっかり協議し、国民の安全確保という大きな視点から対応しないといけない」と述べた。
横倉義武会長も「検査を十分に受けられない今の体制を改善してほしいという意味でも、このキットは大きな一石を投じた」としつつ、偽陰性の懸念を念頭に「検査に頼りすぎることは危険」とした。