皮疹のない皮膚筋炎患者の報告数少なく、多発筋炎に分類
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は4月23日、皮膚筋炎の患者の中に、皮疹のない皮膚筋炎が存在することを証明し、それは自己抗体である抗NXP-2抗体と関連することを明らかにしたと発表した。これは、同センター神経研究所疾病研究第一部の西野一三部長、井上道雄流動研究員、Jantima Tanboon流動研究員とトランスレーショナル・メディカルセンターの平川信也科研費研究員、立森久照室長、筑波大学医学医療系皮膚科の沖山奈緒子講師、大阪大学大学院医学系研究科皮膚科学の藤本学教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「JAMA Neurology」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
特発性炎症性筋疾患(以下、筋炎)は主に骨格筋に炎症性変化をきたす、自己免疫が原因と考えられる疾患。これまで長く使われてきた筋炎の分類では、皮膚に症状がある筋炎を「皮膚筋炎」、ないものを「多発筋炎」と分類。皮膚筋炎については、国内にはおよそ1万7,000人の患者がいると推定されている。
近年、筋炎に関連する自己抗体の発見、筋肉の病理学的な検討、遺伝子発現の解析などにより、より詳細な、病気の発症メカニズムにあてはまった分類が使われるようになってきた。皮膚筋炎については、抗NXP-2抗体、抗MDA5抗体を含む5種類の自己抗体が発見され、それぞれに特徴的な症状と結びつきが強いことが報告されている。一例として、抗MDA5抗体は、筋肉に症状がない皮膚筋炎との結びつきが強いことがわかっている。一方、皮疹のない皮膚筋炎について、これまでの分類では多発筋炎とされてきたため、少数の報告があるのみで、その存在は広く認められていない。
皮疹のない皮膚筋炎の患者で抗NXP-2抗体陽性は86%
研究グループはまず、皮膚筋炎の診断マーカー「ミクソウイルス耐性タンパク質A」(MxA)が陽性の皮膚筋炎の患者のうち、皮膚筋炎特異的自己抗体が完全に測定されている182人を対象に、症状や病理所見、自己抗体の検討を行った。その結果、182人のうち14人(8%)は筋生検時に皮疹がみられず、皮疹のない皮膚筋炎と診断、その存在が明らかになった。
また、従来の皮疹のある皮膚筋炎の患者において、抗NXP-2抗体陽性は28%(168人中47人)であったのに対して、皮疹のない皮膚筋炎の患者では14人のうち12人(86%)で陽性であり、皮疹のない皮膚筋炎と抗NXP-2抗体の関連が明らかになった(粗オッズ比15.45、95%信頼区間3.33-71.63、p値<0.001)。さらに、この14人の皮疹のない皮膚筋炎の患者をフォローアップ。無筋症性皮膚筋炎(皮膚の症状があるものの筋肉の異常は明らかでない)の診断基準を用いて、皮疹がない期間を発症後2年以上と限定した場合でも、依然として皮疹のない皮膚筋炎の患者は9人存在し、抗NXP-2抗体との関連があることを明らかにした(皮疹なし89% vs 皮疹あり28%、粗オッズ比20.33、95%信頼区間2.48-166.96、p値=0.005)。
近年、皮膚筋炎の発症メカニズムに「1型インターフェロン」が重要な役割を果たすことが明らかになっている。また、1型インターフェロンがさまざまな作用を引き起こす際の「JAK-Stat経路」をブロックする治療薬が開発されており、皮膚筋炎に対して効果が報告されている。この薬剤は理論的には他の筋炎ではなく、皮膚筋炎に有効と考えられるため、皮疹がない皮膚筋炎の患者を正しく診断することにより、将来的にそれらの薬剤を使用できる可能性がある。「今後、皮疹のない筋炎の患者さんにおいても、診断のために自己抗体の測定、筋生検がなされることが期待される」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・国立精神・神経医療研究センター プレスリリース