サイトグロビン、酸化ストレスで生じるDNA損傷から細胞を保護
大阪市立大学は4月21日、肝障害改善の可能性が期待されているグロビンタンパク質「サイトグロビン」が、酸化ストレスで生じるDNA損傷から細胞を保護する役割があることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科・肝胆膵病態内科学の河田則文教授、松原三佐子特任講師、翁良徳大学院生らの研究グループによるもの。研究成果は、国際学術誌「Journal of Hepatology」に掲載されている。
画像はリリースより
抗ウイルス性治療薬の開発によりウイルス性肝炎は減少しているが、近年、メタボリックシンドロームを背景に肝線維化を伴って発症する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が増加している。しかし、NASHに対する十分なエビデンスに基づいた治療法は確立されていない。肝臓が障害を受けると肝星細胞が活性化してコラーゲンの産生が亢進し、原因が除去されない場合、組織の瘢痕化を生じ肝機能が著しく低下する肝硬変へと進行する。そのため、抗線維化治療法の標的となる細胞として、活性化肝星細胞が近年注目され、盛んに研究が行われている。
以前、研究グループが発見したサイトグロビンは、哺乳類第4番目のグロビンタンパク質であり、肝臓では肝星細胞でのみ発現。これまでに、サイトグロビンが肝障害を改善する可能性があることを報告している。しかし、活性化肝星細胞におけるサイトグロビンの生理作用および発現制御機構は不明だった。
肝線維化の早期診断マーカーになる可能性も
今回研究グループは、脂肪肝患者における肝線維化の病態とサイトグロビンの発現変動を調べた。その結果、肝線維化の進展に伴い、サイトグロビンの発現量が低下することを発見。このことは、サイトグロビンが肝線維化の早期診断マーカーになる可能性を示している。
また、肝星細胞活性化の強力な誘導因子「TGF-β」は、サイトグロビンの発現を抑制し、それに伴い過剰なコラーゲン産生を促していたという。その他、サイトグロビン発現の低い患者では、酸化的DNA損傷が増加することがわかった。これらの結果より、今後、サイトグロビン発現の誘導剤を用いて、肝線維化の改善に向けた新しい治療法の開発が期待される。
今回の研究成果により、肝星細胞の酸化的DNA損傷が肝線維化病態進展の一因であることが明らかになった。この研究結果は、サイトグロビンが肝線維化の早期診断指標になることを示唆しており、初期段階から治療に取り組むことが可能になると期待される。さらに、研究グループは、今回の研究成果を足掛かりに、サイトグロビンの発現誘導剤を開発し、活性化肝星細胞を標的とした新しい抗線維化治療法の開発に役立てたいとしている。
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・大阪市立大学 プレスリリース