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難治性がんに抗腫瘍効果示すマイクロRNA同定、新規核酸抗がん薬に期待-東京医歯大

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2020年04月21日 AM11:45

従来の分子標的治療薬では比較的高頻度に薬剤耐性を獲得するという課題

東京医科歯科大学は4月20日、2,565種のマイクロRNAの機能的スクリーニングにより、多様な難治性がんに対して抗腫瘍効果のあるマイクロRNAを同定したと発表した。これは、同大難治疾患研究所・分子細胞遺伝分野の玄泰行助教、稲澤譲治教授と大学院医歯学総合研究科顎口腔外科学分野の髙川祐希大学院生らの研究グループによるもの。研究成果は、国際科学誌「Molecular Therapy」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

近年、がんの治療は飛躍的に進歩しており、いわゆる抗がん剤や免疫療法に加え、がん細胞において活性化している遺伝子やタンパク質をターゲットとした分子標的治療薬が臨床応用されている。このような分子標的治療薬の問題点の1つとして、投与期間中に比較的高頻度に薬剤耐性を獲得したがん細胞が出現することが知られており、次世代型の医薬品として核酸抗がん薬の開発が望まれている。核酸の1種であるマイクロRNA()は、20-25塩基程度の内在性のノンコーディングRNA。複数の標的遺伝子の発現を抑制する働きがあり、核酸抗がん薬のシーズとして注目されている。

「miR-1293」はBRD4に加え、DNA修復経路に関わる複数の遺伝子を同時に抑制

研究グループは、抗がん核酸薬の創薬シーズとなりうる新規のがん抑制型マイクロRNAを同定するため、現在登録されているヒトマイクロRNAの約96%を網羅する2,565種類のマイクロRNAの抗腫瘍効果を多種多様ながん細胞を用いて調べた。その結果、抗腫瘍効果の極めて強い7種類(miR-1293、miR-876-3p、miR-4438、miR-6751-5p、miR-634、miR-3140-3p、miR-92a-2-5p)が、がん抑制型マイクロRNAの候補として同定された。

さらに詳細な機能解析から、miR-1293、miR-876-3p、miR-6751-5pの3種類が、すでに研究グループが報告したmiR-3140-3pと同様に、がん治療の創薬の標的として注目されているブロモドメインタンパク質遺伝子「BRD4」を直接抑制していることを明らかになった。

また、最も抗腫瘍効果の高かったmiR-1293について、in vitro/vivoにおいて核酸抗がん薬としての可能性を評価した。miR-1293を導入すると、顕著にがん細胞の細胞死を誘導し、BRD4の抑制に加えて、DNA修復経路に関わる複数の遺伝子(APEX1、RPA1、POLD4)を直接の標的とし、それら機能を抑制することが判明。その結果、miR-1293を導入すると損傷DNAの修復が抑制され、DNA障害のマーカーγH2AXが蓄積することが示された。マウス皮下腫瘍モデルを用いたmiR-1293の治療実験では、腫瘍周囲にmiR-1293を局所投与すると、miR-1293治療群において腫瘍の成長が著しく抑制されることが示された。

今回の研究により、2565種類のヒトマイクロRNAの中から顕著な抗腫瘍効果を示すmiR-1293が同定された。「miR-1293を用いた核酸治療(核酸抗がん薬)は難治がんに対する新たな治療戦略となる可能性がある」と、研究グループは述べている。

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