エタノール、界面活性剤成分含有の医薬部外品・雑貨に新型コロナの消毒効果はあるのか?
北里大学は4月17日、市場に流通している医薬部外品・雑貨のうち、主にエタノール、界面活性剤成分を含有し、新型コロナウイルスの消毒効果が期待できる市販製品を対象に、新型コロナウイルス不活化効果を有する可能性について、試験管内でのウイルス不活化評価を実施し、その結果を発表した。これは、同大大村智記念研究所ウイルス感染制御学研究室Ⅰの片山和彦教授らの研究グループによるもの。
新型コロナウイルスの消毒方法は、厚生労働省、国立感染症研究所などを通じて情報が提供されている。しかし、一般に市場に流通している市販製品(医薬部外品・雑貨)による不活化効果に関する情報は少ない。
そこで研究グループは、市場に流通している医薬部外品・雑貨のうち、主にエタノール、界面活性剤成分を含有し、新型コロナウイルスの消毒効果が期待できる市販製品を対象に、新型コロナウイルス不活化効果を有する可能性について、試験管内でのウイルス不活化評価を実施。各製品サンプルについては、製品のパッケージ裏面に書かれている使い方を参考にし、希釈が必要な場合には水道水を用いた。市販の医薬部外品及び雑貨については、十分な供給体制を確保可能なこと、海外での使用への対応が期待できることを考慮。また、同研究で評価する製品の選定にあたっては、同研究結果の公開に異議を唱えないことを前提として、国内複数企業へ製品サンプルの提供を要請し、同意が得られた企業の製品を使用した。また、新型コロナウイルス株は国立感染症研究所の2019-nCoV JPN/TY/WK-521を使用し、細胞はJCRB細胞バンクのVero-E6/TMPRSS2を使用した。製品評価は、同大大村智記念研究所ウイルス感染制御学Ⅰ研究室で実施した。
評価は、新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業・「新型コロナウイルスの増殖機構の理解と治療剤開発に関する研究」(研究代表・国立感染症研究所・竹田誠)研究参加者である片山和彦教授担当課題である「天然物ライブラリーからの抗新型コロナウイルス薬開発」のために構築した抗ウイルス作用(ウイルス不活性化効果)を示す物質を選別するための評価システムを利用して行った。
エタノールは濃度50%以上であれば、接触時間1分間で十分にウイルス不活化
まず、100万コピーウイルスRNA/μLのウイルス液3μLを27μLの試験対象液と混合し、常温で1分間(製品裏面の使い方から、手指の洗浄、拭き取り洗浄を想定)または10分間(製品裏面の使い方から、洗濯、器具の洗浄を想定)接触させた。その後、混合した液が試験に用いる細胞に影響を及ぼさないようにするため、細胞を培養に用いる培地で希釈(100倍希釈、1,000倍希釈を試験)して添加し、6日間培養した。顕微鏡観察による細胞傷害性は毎日確認した。リアルタイムRT-PCRでのウイルス量の検出は、0日目、3日目、6日目に実施した。その結果、細胞傷害が起こらず、リアルタイムRT-PCRでもウイルスRNA量の増加が確認されなかった試験対象液を「ウイルス不活化効果あり」とした。
接触時間1分で不活化効果が認められた製品サンプルは以下の通り。
かんたんマイペット(原液)、クイックルワイパー 立体吸着ウエットシート 香りが残らないタイプ(絞り液)、クイックルワイパー 立体吸着ウエットシートストロング(絞り液)、クイックルJoanシート(絞り液)、クイックルJoan除菌スプレー(原液)、食卓クイックルスプレー(原液)、セイフキープ(絞り液)、トイレマジックリン 消臭・洗浄スプレー ミントの香り(原液)ハンドスキッシュEX(原液)、ビオレガード薬用泡ハンドソープ(原液)、ビオレu薬用泡ハンドソープ(3倍希釈)、ビオレガード薬用手指用消毒スプレー(原液)、ビオレガード薬用ジェルハンドソープ(3倍希釈)、ビオレu手指の消毒液(原液)、リセッシュ除菌EXプロテクトガード(原液)。
なお、不活化効果が認められなかったサンプルはなかった。
接触時間10分で不活化効果が認められた製品サンプルは以下の通り。
アタック高浸透リセットパワー(3.5g/L)、アタックZERO(3,000倍希釈液)、クリーンキーパー(100倍希釈)、ワイドハイターEX パワー液体(100倍希釈液)、ワイドハイターEX パワー粉末(5.0g/L)、ワイドマジックリン(10g/L)。
不活化効果が認められなかったのは、アタック抗菌EX スーパークリアジェル(1,200倍希釈液)。
なお、試験系評価のため、実施したエタノールの試験結果についても開示した。水道水で濃度を調整した10%、30%、50%、70%、90%のエタノールの不活化効果について調べたところ、接触時間1分で不活化効果が認められたのは、50%、70%、90%エタノール、不活化効果が認められなかったのは、10%、30%エタノールだった。接触時間10分で不活化効果が認められたのは、50%、70%、90%エタノール、不活化効果が認められなかったのは、10%、30%エタノールだった。
今回の研究成果により、エタノールは50%以上の濃度であれば、接触時間1分間で十分なウイルス不活化が可能であることが判明した。なお、同研究で不活化効果が確認された製品は、新型コロナウイルスの不活化に有効と考えられる。新型コロナウイルスの汚染が懸念される手指や硬質表面の洗浄のほか、日常で使用する衣類やリネン類の洗浄などへの活用が期待できる。
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・北里研究所 プレスリリース