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アフリカトリパノソーマ症の新薬開発に期待、T. bruceiの新たな知見-大阪府大ほか

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2020年04月20日 PM01:15

T. bruceiはプリンのデノボ合成経路欠損、サルベージ経路中の酵素が創薬標的候補に

大阪府立大学は4月17日、人獣共通の致死性感染症「)」の新薬開発に貢献する研究として、寄生性原虫Trypanosoma brucei(T. brucei)におけるGMP還元酵素(GMPR)のアロステリック制御メカニズムに関する新しい知見を得たと発表した。この研究は、同大大学院生命環境科学研究科応用生命科学専攻の乾隆教授(21世紀科学研究センター創薬科学研究所所長、研究推進本部副本部長)、今村章博士後期課程3年(当時)(「博士課程教育リーディングプログラム」第1期履修生)、岡田哲也博士研究員、英国のDiamond Light Sourceの井上勝晶博士ら、大阪大学工学研究科の内山進教授ら、およびケニアの African Union/NEPADのKubata B. Kilunga博士の研究グループによるもの。研究成果は、Nature Publishing Group が刊行する学術雑誌「Nature Communications」に掲載されている。


画像はリリースより

アフリカトリパノソーマ症は、T. bruceiが、ツェツェバエを媒介昆虫として、ヒトや家畜に寄生することによって引き起こされる人獣共通の致死性感染症。熱帯地域の途上国を中心に流行している感染症を指して用いることが多い、世界保健機構(WHO)が指定するNeglected Tropical Diseases(顧みられない熱帯病)の1つでもある。同感染症に対する現在の治療薬には、強い副作用があることや薬剤耐性原虫の出現などの問題があり、新たな作用機序を有する新規治療薬の開発が望まれている。

T. bruceiはプリンヌクレオチドのデノボ合成経路を欠損しているため、宿主から得たヌクレオシドからサルベージ経路を介してプリンヌクレオチドを合成する。同経路は、グアニンおよびアデニンヌクレオチドの相互変換を行い、これらのヌクレオチドのバランスを保つ重要な働きを持つことから、サルベージ経路中の酵素は創薬標的候補分子になると考えられる。

研究グループの研究対象であるGMPRは、このサルベージ経路上の酵素であり、NADPHを補酵素としてGMPからIMPへの脱アミノ化反応を触媒する。この働きは、細胞内のGMP濃度の恒常性を維持するために重要なことから、同酵素は進化の過程においても高度に保存されている。

bGMPRのアロステリック制御は、CBSドメインへのG/A結合で誘導される多量体構造の差異に起因

今回の研究では、T. brucei GMPR(TbGMPR)が有する種特異的構造であるシスタチオニンβ-シンターゼ(CBS)ドメインに、グアニンヌクレオチド(GTPおよびGMP)あるいはアデニンヌクレオチド(ATP)がアロステリック結合することにより、GMPRの多量体構造の変化を伴った正および負の活性調節が行われることを明らかにした。すなわち、ヌクレオチド非存在下では、“緩んだ(relaxed)”8量体を形成しているが、CBSドメインへのグアニンヌクレオチドの結合により“ねじれた(twisted)”8量体を形成することによって活性化される。一方、ATPを加えた場合には、これらの8量体構造が2つの4量体に解離することによって、TbGMPR活性を抑制することが示されたという。以上の結果から、TbGMPRのアロステリック制御は、CBSドメインへのグアニンあるいはアデニンヌクレオチドの結合で誘導される多量体構造の差異に起因することが、世界で初めて明らかになった。

ヒトをはじめとする宿主動物のGMPRにはCBSドメインが存在しない。従って、同ドメインを標的とすることで、T. bruceiのGMPRのみを特異的に阻害する医薬候補化合物の開発が可能となり、既存のアフリカトリパノソーマ症治療薬が抱える副作用克服の一翼を担うことが期待される、と研究グループは述べている。

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