ぜんそくを悪化させるIL-5/IL-13の産生を制御する機序について研究
群馬大学は4月9日、IL-5やIL13の主要な産生細胞を同定し、さらに、この細胞において、エキソフィリン5と呼ばれるタンパク質が、IL-5およびIL-13の過剰な産生を抑制していること、つまり、エキソフィリン5が、ぜんそくの重症化を防ぐ方向に作用していることを明らかにしたと発表した。これは、同大生体調節研究所 遺伝生化学分野の奥西勝秀講師、泉哲郎教授らの研究グループが、国立病院機構東京病院、理化学研究所、東京大学などと共同で行ったもの。研究成果は、「Journal of Clinical Investigation」に掲載されている。
画像はリリースより
ぜんそくや花粉症などのアレルギー疾患の患者数は、近年、著増している。その中でもぜんそくは重症化した場合死に至ることもあり、現在でも年間1,500人程度が死亡している。ぜんそく死を減らすためにも、重症化する機序を明らかにし、それを元にした新しい治療法の開発が望まれている。ぜんそくの病態(気道の炎症、粘液産生亢進や気道過敏性の亢進)を悪化させる方向に作用することが知られている物質として、インターロイキン(IL-5およびIL-13)がある。これらIL-5およびIL-13の産生を制御する機序を明らかにすることは、ぜんそくの重症化を抑制する上で、非常に重要となる。
研究グループは、これまでにRab27というタンパク質が、インスリン分泌顆粒などの細胞内に存在する小胞の膜上に存在し、細胞外からの刺激に応じて小胞を細胞内から細胞表面へ移動させ、最終的に、小胞内に含まれているインスリンなどの生理活性物質を細胞の外に分泌させる作用があることを見出し、報告してきた。Rab27には、それと結合して小胞の細胞内での移動を協調的に制御する、エフェクターと呼ばれる11種類のタンパク質が存在することが知られている。しかし、インスリン分泌とは異なり、Rab27やそのエフェクタータンパク質のぜんそくにおける役割は、ほとんどわかっていなかった。
一部の病原性Th2と肺上皮細胞に高発現のエキソフィリン5がIL-5、IL-13、IL-33を抑制
今回研究グループは、マウスのぜんそくモデルを用いて、IL-5とIL-13が、これまでその主要な産生細胞として考えられていた病原性Th2細胞と呼ばれる細胞群の中でも、わずか数パーセントしか存在しない細胞から、特異的に高産生されることを突き止めた。この細胞に、エキソフィリン5は高発現し、肺上皮細胞から産生されるサイトカインIL-33に反応して産生されるIL-5、IL-13の産生を抑えていた。また、エキソフィリン5は、IL-33を産生している肺上皮細胞にも高発現し、細胞外からの刺激に応じたIL-33の分泌を抑えていた。
実際に、エキソフィリン5を欠損したマウスは、肺上皮細胞からのIL-33の放出が亢進し、病原性Th2細胞におけるIL-33反応性が増大し、IL-5とIL-13の産生が増え、ぜんそくが重症化した。
これまでヒトにおいて、Rab27の遺伝子多型とぜんそくの臨床的指標(呼気一酸化窒素濃度)の関連が報告されていた。今回の研究成果により、Rab27と結合するエキソフィリン5が、ぜんそくの重症化を防ぐ、具体的な分子機序を明らかにされた。
研究グループは、「ヒトの病原性Th2細胞においてもエキソフィリン5が発現し、IL-33反応性を示す性質があることを確認しており、ヒトにおいても、エキソフィリン5がぜんそくの重症化を防ぐ方向に作用していると考えられる。今回、ヒトの身体を構成する免疫細胞や上皮細胞の中に、ぜんそくの重症化を防ぐ機構が存在し、その中で、エキソフィリン5という分子が中心的な役割を果たしていることが明らかになった。今後、この機構を活性化させることで、ぜんそくの重症化を防ぐような、新規の治療法開発が期待される」と、述べている。
▼関連リンク
・群馬大学 プレスリリース