脳梗塞発症時にBADを鑑別できる有効なバイオマーカーはない
新潟大学は4月10日、炎症性タンパク質の一つであるPentraxin3(PTX3)が、脳梗塞の病型の一つであるbranch atheromatous disease(BAD)では超急性期に高値となり、診断バイオマーカーとなることを初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大脳研究所脳神経内科学分野の二宮格特任助教、金澤雅人准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Journal of Neurology」に掲載されている。
画像はリリースより
脳卒中は、日本での死因の第4位、寝たきりの原因の1位となっている。高齢化社会を迎え、脳卒中患者は急増し、3人に1人が脳卒中を発症する時代に突入した。脳梗塞の中でも、BADは発症時に症状が軽いことが多く、特にラクナ梗塞との鑑別が困難で、入院後から症状が悪化し、最終的に重篤な後遺症を残すことも多い。現在までに脳梗塞発症時にBADを鑑別できる有効なバイオマーカーはなく、通常は発症数日後に、症状が進行することを確認して初めてBADと診断される。
BADとラクナ梗塞は病態機序が異なっており、ラクナ梗塞が穿通枝動脈遠位のリポヒアリノーシスによる動脈破綻であるのに対し、BADは穿通枝動脈の開口部のアテローム硬化性変化が主体であるといわれている。炎症性タンパク質のPTX 3PTX3は、炎症反応の初期に関与する。近年では頸動脈内の不安定プラーク内免疫細胞は、BAD病態に関与することが指摘されている。研究グループは、プラークの不安定化に伴い、炎症を反映するPTX3PTX3は、BADの早期診断バイオマーカーとなり得ると考えた。
入院時に血清PTX3測定で、精度よくBADを診断可能
研究グループは、PTX3がBADのバイオマーカーとなり得るかどうかを検証するために、93人の脳梗塞入院患者について、入院時の血清PTX3をELISA法により測定した。その結果BAD患者で、血清PTX3濃度が発症から24時間までの入院時に有意に高値であることが明らかになった。血清PTX3値に関して2,778pg/mlをカットオフ値とすると、感度77%、特異度77%でBADを入院時に診断できることも明らかとなった。
BADは現在までに有効な診断バイオマーカーがない。研究グループは、「PTX3を用いて早期にBADが鑑別できることで、新しい治療法に対する前向き研究を計画することが可能となり、現在治療が極めて困難な、今後のBADの治療開発にも大きく貢献することができる」と、述べている。また、より診断に寄与できるキット開発を産学共同で検討しており、特許出願を行い、臨床応用することを目指して研究を進めているとしている。
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・新潟大学 研究成果