これまでに発見されている3つの関連因子だけでは説明がつかない
大阪大学は4月7日、哺乳類の受精膜融合に必須な精子膜タンパク質FIMPを世界で初めて発見したと発表した。この研究は、同大微生物病研究所の藤原祥高招へい准教授(現在:国立循環器病研究センター室長)、伊川正人教授らの研究グループ、ベイラー医科大学のマーティン M. マツック教授らの研究グループの国際共同研究としておこなわれたもの。研究成果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」電子版に掲載されている。
画像はリリースより
これまで哺乳類の受精膜融合に関わる因子は3つ報告されており、卵子側ではCD9(2000年)とJUNO(2014年)、そして精子側では同研究グループが発見したIZUMO1(2005年)だけだった。最近の研究から、IZUMO1はJUNOと直接結合することで、受精膜融合の初期段階である精子と卵子の細胞膜接着に寄与するとされている。しかし、たった3つの因子だけでは、膜融合の分子機構を全て説明できないことから、さらなる融合関連因子の発見が待たれている状況だった。
2つ目の精子側必須因子FIMPを発見、IZUMO1とは別経路で受精膜融合に関与
今回、伊川教授らの研究グループは、CRISPR/Cas9を用いて膜貫通ドメインKOマウスを開発・解析することにより機能未知の膜タンパク質としてFIMPを同定。FIMPが受精膜融合に必須であること、IZUMO1とは別経路(別段階)で膜融合に機能することを解明した。今回の精子膜タンパク質FIMPの発見は、2005年のIZUMO1発見以来、世界との競争に競り勝ち2つ目の必須因子の発見になったという。
日本では、約6組に1組の夫婦が不妊の検査や治療を受けており、不妊症は社会問題のひとつとなっている。研究グループは、「今回の発見された精子膜タンパク質FIMPは、男性不妊の新たな原因遺伝子として診断・検査の対象となり、治療薬や避妊薬の開発へとつながることが期待される」と、述べている。
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