どの程度の歩行が健康に効果的なのかを、国民健康栄養調査データから分析
米国立衛生研究所(NIH)は3月24日、日々の歩数が多いほど、死亡リスクが低くなることがわかったと発表した。これは、米国立がん研究所(NCI)と米国立老化研究所(NIA)、および米疾病管理予防センター(CDC)の研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of the American Medical Association」に掲載されている。
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歩行などの身体活動が健康に良いということは広く知られているが、「何歩歩けば死亡リスク低下につながり、どのくらいの速さで歩くのが良いのか」は未だ明らかにはなっていない。また、これまでにも歩数と死亡率について調査は行われてきたが、対象は高齢者や体を衰弱させる慢性疾患の人に限られていた。そこで今回、研究グループは、米国の一般的な成人における1日の歩数および歩行強度と死亡率との関連を解析した。
研究では、2003~2006年に米国で実施された「国民健康栄養調査」(National Health and Nutrition Examination Survey: NHANES)の情報を利用。この調査では、対象者に7日間計測機を着用してもらい、1日の歩数、歩行のスピード(3つの区分で評価)のデータを収集している。今回研究グループはそのデータの中から、03~06年当時40歳以上だった4,840人について、2015年12月まで追跡し、死亡率との関連を調べた。解析にあたって、研究開始時の年齢や性別、健康状態、喫煙、糖尿病、脳梗塞、BMIといった要素を調整した。
性別、年齢に関わらず歩数が多いほど死亡率は低下
対象者の平均年齢は56.8歳、平均歩数は9,124歩/日で、追跡約10年間で1,165人が死亡。死因には、循環器疾患(406人)、がん(283人)が含まれていた。「歩数の多さ」で区分して総死亡率を分析した結果、1日4,000歩の群と比較して、1日8,000歩の群は、51%死亡リスクが低かった(ハザード比=0.49 [95%信頼区間, 0.44-0.55])。 また、1万2,000歩の群と4,000歩の群を比較すると、1万2,000歩の群で65%死亡リスクが低いことがわかった(ハザード比=0.35 [95% 信頼区間, 0.28-0.45])。
一方で、1日あたりの総歩数を調整したうえで、「歩行の速さ(強度)」と死亡リスクとの関連を調べたが、有意な関連は見られなかった。さらに、サブグループによる分析を行ったところ、年齢や性別、人種に関わらず、歩数の多さと死亡率低下に関連があることがわかった。循環器疾患とがんによる死亡率も、歩数が多いほど低くなっていることも判明した。
今回の研究結果は、歩数が死亡に影響することを示唆するものであり、「大人は座る時間を短くし、もっと体を動かすべきである」という推奨に通じるものである。しかし、観察研究であることから、因果関係の断定には至っていない。「身体機能が活発であることは、肥満や心臓病、2型糖尿病、一部のがんのリスクを軽減するなど、多くの利点がある。運動には健康維持において重要であり、1週間のうちに中程度の強度の運動を少なくとも150分は行うことが望ましい」と、研究グループは述べている。