眼底画像における脈絡膜血管の透見度から脈絡膜厚が推定できるのではないかと推察し検証
兵庫医科大学は4月1日、画像処理とAI(人工知能)により、眼底写真から脈絡膜の厚さを推定することが可能であることを証明したと発表した。これは、同大眼科学の小椋有貴病院助手らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。
脈絡膜厚さは、中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)、加齢黄斑変性、近視性網脈絡膜疾患など、さまざまな眼底疾患の病態に関連している。近年、光干渉断層法(OCT)の進化に伴い、脈絡膜の生理学的、病理学的変化に関連した多くの研究が報告されている。
脈絡膜は加齢とともに、また、近視が強いほど薄くなることが知られているが、脈絡膜が薄くなると、豹紋状眼底を呈する。つまり、脈絡膜血管が眼底写真において観察しやすくなる。反対に、Vogt小柳原田病(VKH)のように脈絡膜が厚くなると、脈絡膜血管はぼやけて観察しづらくなる。研究グループは、この特徴を利用して、眼底画像における脈絡膜血管の透見度から脈絡膜厚が推定できるのではないかと考え、検証を行った。
メラニン色素が抜ける「夕焼け状眼底」についても対応可能か今後検討
研究は、正常眼200眼とCSC眼200面を対象に、画像処理で眼底写真を処理する方法と人工知能を用いる2法を用いて行った。
まず、カラー眼底写真から網膜血管消去画像を作成。脈絡膜血管を描出し、視神経乳頭を削除した。それによって得られた画像から特徴量(CVAI)を算出し、特徴量と脈絡膜厚の実測値の相関を検討した。
人工知能についてはK-Fold法を用いた。全ての画像を5つのグループに分け、4つのグループは拡張し、モデルのトレーニングに使用、1つのグループを検証データとして使用。同プロセスを5回繰り返した。またVisual Geometry Group-16(VGG-16)モデルという、畳み込みニューラルネットワークシステムを使用し、眼底写真から直接脈絡膜厚の推測を行った。
その結果、CVAIと脈絡膜厚の相関は、正常眼において-0.60、CSC眼では-0.46だった。人工知能を用いた方法では、脈絡膜厚の推測値と実測値の相関が、正常眼においては0.68、CSC眼においては0.48だった。
今回の研究成果により、画像処理を用いた方法でも人工知能を用いた方法でも、眼底写真からの脈絡膜厚の推測は可能であることが明らかになった。しかし、今回は対象疾患がCSCと正常眼に限られていた。また、VKHにおいては寛解期に一部の患者で「夕焼け状眼底」という、メラニン色素が抜けたオレンジ色の眼底を示すことがある。この場合はメラニンがない分、脈絡膜血管の透過性が亢進してしまい、実際の脈絡膜厚との相関が得られにくいことが考えられるという。研究グループは今後、それについての検討と、色調補正などにより問題解決が可能かどうかについて検討するとしている。
▼関連リンク
・兵庫医科大学 研究成果