⾮結核性抗酸菌症の約7~8割を占める肺MAC症は難治性
新潟大学は4月1日、肺MAC症の病原体である非結核性抗酸菌の薬剤標的候補を、トランスポゾンシーケンシング(TnSeq)により、全ゲノム規模で同定することに成功したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科細菌学分野の立石善隆准教授、松本壮吉教授、藤田医科大学医学部微生物講座・感染症科の港雄介講師、ミネソタ大学微生物学分野のAnthony D. Baughn准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。
画像はリリースより
肺MAC症に代表される⾮結核性抗酸菌症は、結核菌(結核の病原体)ないしはライ菌(ハンセン病の病原体)を除いた抗酸菌(マイコバクテリア)によって引き起こされる感染症。マイコバクテリウム・アビウムとマイコバクテリウム・イントラセルラーエは、肺MAC症の原因菌として、⾮結核性抗酸菌症の約7~8割を占めている。肺MAC症は、中⾼年の⼥性に急増しており、既存の抗結核薬を含めた多剤併⽤投薬を⾏うが、難治性で慢性化することも多い。
TnSeqで全5,126のうち506遺伝子が生存に必須と判明
⾮結核性抗酸菌症は、日本で急増しているが、既存の薬を併⽤しても効果が低く難治性のため、病原体に対する新しい薬の開発が切望されている。しかし、新しい薬を開発するためには、病原体である⾮結核性抗酸菌の⽣存に必須な遺伝⼦(⽣存必須遺伝⼦)を同定することが重要となる。そこで今回、研究グループは、主要な⾮結核性抗酸菌であるマイコバクテリウム・イントラセルラーエに対して、トランスポゾン(動く遺伝⼦)による変異株ライブラリーの作成と次世代シーケンサーによる全ゲノムシーケンシングを組み合わせたトランスポゾンシーケンシング(TnSeq)を実施し、全ゲノム規模で⽣存必須遺伝⼦の同定を⾏った。
その結果、マイコバクテリウム・イントラセルラーエの全遺伝⼦5,126のうち、506の遺伝⼦が⽣存必須遺伝⼦であること、そして、低酸素条件下でのバイオフィルム形成には175の遺伝⼦が必須であることがわかった。研究グループはさらに、これらの結果に対して、化合物や阻害薬を使った細菌学的実験を⾏い、遺伝⼦の必須性を確認したという。研究グループは、「今回同定した⽣存必須遺伝⼦群は、⾮結核性抗酸菌の薬剤標的となるため、肺MAC症に対する新しい治療薬の開発において重要な情報源となる」と、述べている。
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