安倍晋三首相は3月28日の記者会見で、富士フイルム富山化学の抗インフルエンザウイルス薬「アビガン錠」(一般名:ファビピラビル)について、新型コロナウイルス感染症を対象とした承認に向けた治験を開始する考えを表明した。同剤は、国内での新型インフルエンザ等の流行時に限定して使用することとしており、政府が約200万人分を備蓄している。
安倍氏は、同剤について、「副作用なども判明している」としつつ、「ウイルスの増殖を防ぎ、既に症状改善に効果が出ているとの報告もある。海外の多くの国から関心が寄せられており、希望する国々と協力しながら臨床研究を拡大すると共に、薬の増産を開始する」と述べた。
その上で、「新型コロナウイルス感染症の治療薬として正式に承認するに当たって、必要となる治験プロセスも開始する」との考えを示した。
また、安倍氏は「治療薬やワクチンなどの開発に向けて、大学や民間企業で様々な動きが出てきている。これらを政府が力強く後押しすることで、あらゆる可能性を追求する」とした。
アビガンは、新型・再興型インフルエンザの流行時に他の抗インフルエンザウイルス薬が効かない場合、使用が検討される医薬品。政府が約200万人分を備蓄している。ただ、動物実験で催奇形性の発現が確認されていることから、妊婦または妊娠の可能性がある人には投与できない。
海外では、中国政府が新型コロナウイルス感染症に対する同剤の臨床試験で良好な結果が得られたとして、診療指針に採用する方針を示している。