既存の骨粗しょう症治療薬では、顎骨壊死の有害事象の指摘も
九州大学は3月30日、NIK阻害剤が骨粗しょう症モデルマウスの骨量減少を抑制することを発見したと発表した。これは、同大歯学研究院の高倉那奈特別研究生、自見英治郎教授らのグループと、九州歯科大学の北村知昭教授、東京医科歯科大学の青木和広教授、福岡歯科大学の平田雅人客員教授、オリエンタル酵母工業株式会社長浜生物科学研究所の保田尚孝所長らとの共同研究によるもの。研究成果は、米国学術雑誌「BONE」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
骨粗しょう症は、骨の強度が低下し、骨折リスクが高くなる疾患で、日本では男性300万人、女性980万人と圧倒的に女性の割合が多く、50歳以上の女性の3人に1人が骨粗しょう症になるといわれている。超高齢社会でQOLを維持するには、骨量を維持することが重要な課題。現在、骨粗しょう症治療薬として、さまざまな薬が用いられているが、投薬治療が継続できないことや、有害事象として顎の骨が腐ること(顎骨壊死)が指摘されており、新たな骨粗しょう症治療薬の開発が望まれている。
骨粗しょう症モデルマウスにNIK阻害剤投与で骨吸収が抑制
自見教授らは以前に、「NIK」遺伝子の点変異によって、NIKの正常な機能を失ったaly/alyマウス(自然発症型リンパ節欠損マウス)では、骨の吸収が抑制され、骨量が多いことを報告している。そこで研究グループは、新たな骨粗しょう症治療の分子標的としてNIKに着目。今回、Genentech社が開発したNIK阻害化合物を、骨粗しょう症モデルマウスに投与したところ、破骨細胞による過剰な骨吸収が抑制され、骨量の減少を防ぐことができた。また、投与期間に胸腺や脾臓などの免疫系組織、肝臓や腎臓など主要臓器の障害も見られなかったことから、NIK阻害剤が骨粗しょう症だけでなく、同じく骨吸収が亢進する歯周病や関節リウマチの治療薬にもなる可能性が期待されるという。
超高齢社会を迎え、ロコモティブ症候群にならないためにも運動器(骨や筋肉)の機能維持は重要である。現在、有効な骨粗しょう症治療薬はあるが、歯科においては顎骨壊死という問題に直面しており、歯科界でも安全性の高い骨粗しょう症治療薬の開発に積極的に取り組む必要性を感じていると、研究グループは述べている。
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・九州大学 研究成果