厚労省の調査では、原薬を製造する中国でのトラブルなどによって一時的に供給が滞ったセファゾリンなど、昨年度から今年1月末までに医療用医薬品の供給不安や欠品に陥った事案は計112件に上り、安定供給に支障が出るケースが頻発している。
こうした現状を踏まえ、医薬品の製造、流通関係者などで安定確保の面で特に配慮すべき医薬品や供給不安を予防する取り組みなどを議論するため、同会議が設置された。
初会合では、議論の方向性について意見交換した。坂巻弘之構成員(神奈川県立保健福祉大学教授)は、「原薬を供給する企業が減少する中、日本では薬価が下がり、原薬を提供するのに魅力的な医療提供体制の国でないと判断されれば供給リスクが高まる。安定供給は世界的な構造問題と理解する必要がある」との考えを示した。
松本哲哉構成員(国際医療福祉大学医学部感染症学講座主任教授)は、「厳しい製品基準や薬価引き下げなどで抗菌薬はほぼ国内で生産されておらず、このまま企業努力としてお願いし続けるのか。キードラッグをもう少し厚くするよう検討してほしい」と訴えた。
抗菌薬の国内生産に言及した蛭田修構成員(日本製薬団体連合会品質委員会委員長)は、「国内で作った原薬を使用しても、少なくとも赤字にならないレベルの薬価をつけることが必要」と述べた。
また、寺島徹構成員(日本ジェネリック製薬協会薬制委員会副委員長)は「H2ブロッカーを国産に戻せるか試算したが、国内で原料から作ると非常に高くなると原薬メーカーから回答があった」とし、国内生産に厳しい認識を示した。
長島公之構成員(日本医師会常任理事)は、安定供給に支障が出る場合の情報提供のあり方に言及。「情報を公開する際には混乱が起きないよう配慮し、国が一定の強制力を持って調整できる状態にするなど事前準備が必要」とした。
川上純一構成員(浜松医科大学病院薬剤部長)は「企業から供給不安や出荷調整等の情報が入れば、多数のスタッフが様々な仕事に対応する必要がある。この点に目を向け、メーカーや行政が医療機関をどうサポートするか考えてほしい」と述べた。