国立国際医療研究センターは23日、新型コロナウイルス感染症治療薬の選択について、米ギリアド・サイエンシズの抗ウイルス薬「レムデシビル」の安全性と有効性を評価する国際共同治験に、早ければ今月中に参加すると発表した。大曲貴夫国際感染症センター長は、「人類の危機に対して速やかに標準薬を決める必要がある」と説明。未承認であるものの、他の抗ウイルス薬よりも低濃度でウイルス増殖を抑える同剤を使用する。同ウイルスの感染症患者約440人が参加する予定で、米国など参加国全体でデータを100例収集した時点で今回の治験の評価を行う考え。
レムデシビルは、ウイルスの増殖を抑え、ラッサ熱ウイルス、中東呼吸器症候群(MERS)や重症急性呼吸器症候群(SARS)を含むコロナウイルスなどに対する抗ウイルス活性が確認されている。
コンゴ民主共和国でエボラ出血熱が流行した際にも使用され、ヒトへの投与に関する安全性も確認されているものの、現時点で承認している国はない。
ただ、他の抗ウイルス薬よりも低濃度でウイルスの増殖を抑える働きがあることから、「投与する妥当性はある」と判断。今回の治験に使うことが決まった。
米国、シンガポール、韓国と共同で実施し、最大約75医療機関、被験者数約440人の参加を計画している。
米国国立衛生研究所(NIH)が国際医療研究センターにレムデシビルを提供し、新型コロナウイルス感染症で入院している患者を対象にプラセボ対照試験を実施。1日目に同剤200mgを静脈内に投与後、入院期間中に100mgを1日1回静注投与する。
15日目に被験者の状態を評価し、評価項目は「入院の必要なし、活動にも制限なし」から「死亡」までの8段階に設定した。治験参加国全体でデータを100例収集した時点で一度、今回の治験を評価する方針だが、日本国内の目標登録者数は設定していない。
大曲氏は「標準薬が決まれば、新しく出てくる薬との比較が初めてできる。このような研究なしには一歩も先に進めない」との考えを示した。
國土典宏理事長は、「手強いウイルスと戦うために総力を挙げて取り組み、国民の声に応えることを約束する」との考えを示しつつ、「治療薬の開発は膨大な労力と時間がかかるプロセスと理解してほしい」とも述べた。