1・2次救命処置に反応しない患者への体外循環式心肺蘇生導入の影響を評価
京都府立医科大学は3月16日、成人の院外心停止患者に対する体外循環式心肺蘇生の早期導入の効果について評価した結果、従来の救命処置により自己心拍が再開しなかった心停止患者に対して、体外循環式心肺蘇生を早期導入することが社会復帰率の向上に関連することを示したと発表した。これは、同大大学院医学研究科救急・災害医療システム学の松山匡助教と大阪大学大学院医学系研究科の入澤太郎助教、北村哲久助教らの研究グループによるもの。研究成果は、米国心臓協会雑誌「Circulation」のオンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
病院外で心停止を起こした患者に対し、胸骨圧迫などの心肺蘇生行為やAED(体外式自動除細動器)を用いた電気ショックといった1次救命処置、自己心拍再開が達成できない心停止患者に対しては、静脈路からのエピネフリン投与や声門上気道確保器具や気管挿管チューブを用いた高度気道確保といった 2 次救命処置が行われる。これらの心肺蘇生に反応しない心停止患者に対し、「体外循環式心肺蘇生」の有用性が近年注目されている。しかし、体外循環が実施可能な施設は限られ、また非常に多くの医療資源を導入するため、どのような心停止患者に体外循環式心肺蘇生を導入することが適切かを見極めるかについては、国際心肺蘇生ガイドライン上で大きな課題となっている。
心肺停止状態となった患者の脳や心臓は刻一刻と大きなダメージを受けるため、心肺蘇生開始後からどのタイミング(どれだけの低灌流時間)で体外循環式心肺蘇生を開始できるかが重要とされる。そこで、研究グループは低灌流時間に着目し、低灌流時間の影響について、心停止患者の蘇生中の状態、特に体外循環式心肺蘇生を導入する際の別の重要な条件である蘇生中の心停止患者の心電図波形を考慮した解析を行った。
低灌流時間が23~45分の患者の社会復帰率は22%、心室細動持続も影響の可能性
大阪府下の救命救急センターと2次救急病院の14施設が集まって構築した院外心停止患者登録である「CRITICAL Study」のデータを用いて検証を行った。解析対象は、2012~2016年の間で、体外循環式心肺蘇生を受けた成人院外心停止患者は256人。全患者を対象として体外循環式心肺蘇生開始までの低灌流時間を「短時間群(23~45分)」、「中時間群(46~57分)」、「長時間群(58~117分)」の3つに区分したところ、社会復帰割合はそれぞれ、22.0% (22/100)、17.1%(14/82)、6.8% (5/74)と、早ければ早いほど良いという結果であった (傾向性 P=0.016)。
さらに、患者の心電図波形を考慮した解析では、電気ショックの適応である心室細動が持続していた場合に早期導入による社会復帰率が高く、また低灌流時間が長くなった場合においても社会復帰の可能性が高いことも示した。
「院外心停止患者に対する体外循環式心肺蘇生導入までの低灌流時間と社会復帰率への影響を検討したこの研究結果は、限られた資源を適切なタイミングで導入する指標となり、院外心停止患者の蘇生率向上のためのエビデンスとして国際心肺蘇生ガイドラインの改定にも大きな影響を与えると考えられる」と、研究グループは述べている。
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