医師と患者との間に「治療に対する認識のギャップ」が存在することが判明
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社は3月17日、特発性肺線維症(IPF)患者を診る医師とその患者を対象に「特発性肺線維症(IPF)診療における患者と医師の相互理解:わが国におけるIPF患者と担当医師の意識調査」を行った結果、医師と患者との間に治療に対する認識のギャップが存在することが明らかになったと発表した。これは、同社と神戸市立医療センター西市民病院の冨岡洋海副院長兼呼吸器内科部長との共同研究グループによるもの。研究成果は、医学雑誌「呼吸臨床」に掲載されている。
IPFは、肺胞にできた傷の修復のためにコラーゲンなどの繊維が蓄積し、間質が固くなる病気。徐々に悪化し、進行すると肺が膨らみにくくなり、咳が出たり、酸素が取り込めず息苦しくなったりする。また、IPF患者の死亡原因の約40%が急性憎悪によるもので、IPFの進行に伴って急性憎悪の発現頻度が高まることから、病気の進行を抑えることが重要とされている。
医師に比べて患者は、早期に治療を開始し、今までと同じ生活をすることを重視する傾向
研究グループが行った今回の調査によると、IPFの診断時における説明内容として、患者は「治療薬があること(56%)」のほか、「疾患の特性「予後が悪い(51%)、不可逆性の病気である(50%)」」、「治療費の助成制度の存在(49%)」を重要と捉えていた一方、医師側は、「疾患の特性「急性増悪の可能性(52%)、予後が悪い(41%)、不可逆性の病気である(41%)、進行性の病気である(36%)」」および「検査の必要性(30%)」を特に重視しており、治療薬や治療費については重要度の認識が低い結果だった。また、医師から受けた説明に対し、ほとんどの患者がわかりやすいと捉えていたが、重要な内容であるにもかかわらず、「初期は無症状であっても進行する(41%)」、「急性増悪により呼吸機能が急激に悪化し、予後に大きな影響を与える可能性があること(48%)」などは患者の印象に残っていないことも示され、必ずしも医師の意図した通りに説明内容が伝わっていない現状が明らかになった。
さらに、抗線維化療法に関する医師の説明については、40%の患者が「早期に抗線維化薬による治療を始めることが望ましいこと」を「とても重要である」と回答したのに対し、医師の回答では15%だった。また、35%の患者が「通院治療であるため、仕事や家事への影響が少なく今までと同じ生活ができること」を「とても重要である」と回答したのに対し、医師の回答では11%で、医師と比べて患者は早期に治療を開始し、今までと同じ生活をすることを重視する傾向がみられた。
多くの患者は診断後に自身で疾患、治療に関する情報収集を行っており、その過半数はインターネットから情報を得ていたが、IPFに関する情報は必ずしも最新ではなかったり、十分に情報が記載されていなかったりすることから、患者に対し正確で信頼のおける情報提供が求められることも指摘されている。
同社は、「今回の調査結果に基づき、医師および患者に対し、疾患とその治療法に関する正しい情報の提供をさまざまなチャネルを通してさらに推進していく所存」と、述べている。
▼関連リンク
・日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 プレスリリース