γ線源動作のエラーを可視化することで誤照射事故防止に
名古屋大学は3月17日、高線量率放射線治療の線源の可視化に成功し、同療法における新たな品質保証ツールを開発したと発表した。これは、同大大学院医学系研究科の余語克紀助教らのグループと、北里大学、東京西徳洲会病院、広島がん高精度放射線治療センター、広島大学との共同研究によるもの。研究成果は、「Scientific Reports」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
放射線療法の1つである「高線量率小線源治療」は、副作用が少なく、子宮頸がんなどに集中して高い線量を投与できるがん治療法。放射線を出す米粒大の線源を、専用のチューブ等を通して体内のがん細胞近くまで運び、線源の止まる位置と時間を制御してγ線を当てる治療だ。しかし、高い線量率のため、線源動作のエラーの見逃しがあると、誤照射事故が起きる可能性がある。そのため、治療前の検証で、線源動作のエラーが目で見て分かりやすい品質保証ツールがあれば、事故を未然に防ぐのに有用と考えられている。従来の品質保証法では時間がかかり、いくつかの異なる測定ツールを使用する必要があり煩雑であるという問題がある。
γ線からのチェレンコフ光を可視化、治療前の品質保証法に適用できる可能性
研究グループは、目に見えないγ線を可視化するため、人体に組成が近く、身近な、「水の発光」(チェレンコフ光)に着目。192Irγ線源によって照射された水からの発光を、CCDカメラを使用して撮影し、投影画像を得た。シミュレーション計算との比較から、観測された光は、主にγ線からのコンプトン散乱電子によって生成されたチェレンコフ光であることを確認した。チェレンコフ光の分布は、線源のごく近くを除き、治療計画用ソフトウェアを使用して計算された線量分布と一致し、補正を必要としなかった。
また、発光の強度から線源の強さ(放射能)を測定することができた。さらに、発光画像から線源の止まる位置を測定したところ、従来のフィルム測定と同程度の空間分解能で測定できた。この方法は、一枚の投影画像を使用して、線量分布、線源強度、線源位置を同時に測定できるため、高線量率小線源治療の迅速かつ簡単な品質保証法に適していると考えられる。
「この方法により、線源動作エラーを未然に発見することで、さらに、安全ながん放射線治療に寄与すると期待される。放射線による水の発光を、広くがん放射線治療の品質保証法に適用できる可能性を示すことができるため、さらなる応用が期待される」と、研究グループは述べている。
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