がん、心臓病、アルツハイマーに効果があるとされるポリフェノール化合物「クルクミン」
京都大学は3月16日、大腸がんの標準治療薬オキサリプラチンが効かなくなった治療抵抗性大腸がんの動物モデルにおいて、水溶性プロドラッグ型クルクミン(CMG)が、顕著な抗腫瘍効果を示すことを明らかにしたと発表した。これは、同大医学研究科の金井雅史特定准教授、同大大学院薬学研究科の掛谷秀昭教授、株式会社セラバイオファーマらの研究グループによるもの。研究成果は、国際学術誌「Cancer Science」のオンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
ショウガ科のウコンに含まれるポリフェノール化合物クルクミンは、がん、心臓病、アルツハイマー等に対する治療薬としての開発が期待されている。研究グループはすでに、生体内において、CMGがクルクミンのプロドラッグとして利用できることを証明している。さらに、ヒト結腸腺がんHCT116細胞を移植したマウスゼノグラフトモデルにおいて、CMGは体重減少、骨髄抑制、肝障害などの副作用を伴うことなく、顕著な抗がん活性を発揮することも明らかにしている。
大腸がんの約40%に認められているKRAS変異は、抗がん剤オキサリプラチン療法に対する治療抵抗性の要因であると考えられており、この治療抵抗性メカニズムとして、KRAS変異によるNF-κB経路の活性化が挙げられる。一方、クルクミンはこのNF-κB経路およびプロテアソームなどを阻害することが報告されている。
NF-κB経路やプロテアソームなどが異常に活性化された難治性がんに対する安全性の高い治療薬としての実用化に期待
そこで研究グループは、オキサリプラチンに抵抗性を持つヒト結腸腺がんHCT116細胞(KRAS変異、がん抑制遺伝子p53欠損)を移植したマウスゼノグラフトモデルにおけるCMGの抗腫瘍効果を検討した。
その結果、CMGは生体内においてクルクミンに変換され、KRAS変異によって活性化されたNF-κB経路を抑制し、オキサリプラチン投与により認められる体重減少、骨髄抑制、肝障害などを伴うことなく、顕著な抗がん活性を示すことが明らかになった。また、CMGはオキサリプラチンと併用することで、相加的な抗がん効果を示し、オキサリプラチンの副作用を増強しないことも明らかになった。
今回の研究成果により、CMGがオキサリプラチン抵抗性大腸がんに顕著な抗腫瘍効果を発揮することが明らかになった。すでに、クルクミンがNF-κB経路およびプロテアソームなどを阻害すると報告されていることから、CMGは、両経路が異常に活性化された難治性がんなどに対して、安全性の高い治療薬としての実用化が期待される。
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・京都大学 研究成果