母体の歯周病の有無によって、胎児の推定体重は変化するか
岡山大学は3月13日、妊娠初期における母体の歯周病が、妊娠期間中を通して胎児の発育状況に影響を与えることを明らかにしたと発表した。これは同大学病院予防歯科の田畑綾乃助教、同大大学院医歯薬学総合研究科予防歯科学分野の森田学教授の研究グループによるもの。研究結果は、「Scientific Reports」のオンライン版で公開されている。
画像はリリースより
歯周病は、多くの人が有する歯科疾患。歯の周りの組織(歯肉や骨)に炎症が起き続けることで、歯が抜ける原因となるだけでなく、さまざまな全身疾患とも関連していることが報告されている。妊娠期において、母体の歯周病は、早産のリスク要因の1つであり、その結果、低体重児出産につながると考えられている。出生時の適正な体重は、乳幼児期はもちろん、その後の成人期の健康にも大きく関わってくる可能性がある。過去にも母体の歯周病と出生時の子どもの低体重との関連性が多く報告されているが、そのほとんどが、生まれた直後の体重を評価したものであり、胎内における発育段階での体重との関連性を経時的に調べた報告はほとんどなかった。
歯周病の有無で妊娠32週以降の胎児の推定体重に顕著な差
研究では、妊娠初期の母体の歯周病の有無と、胎内の発育の推移を調査。岡山大学病院を受診し、研究協力に同意を得られた妊婦に対し、妊娠初期に歯周検査を行い、歯周病の有無を判断。その有無により、出産までの超音波測定による胎児の推定体重(EFW)、頭囲(BPD)、腹囲(AC)、大腿骨の長さ(FL)などを比較した。
最終的な解析対象となった44人の妊婦について集計した結果、歯周病がない健康な妊婦(23人)の子と比較して、歯周病がある妊婦(21人)から出生した子の体重は軽いことが確認された。また。超音波測定により、出生までの胎児の推定体重も、歯周病がある妊婦の子で一貫して低値を推移することがわかった。その差は、妊娠32週あたりから顕著になった。また、FLとACについて妊娠20週以降で有意な差はなかったが、BPDにおいては差が確認された。
過去の報告では、妊娠中に歯周病治療をしても、出生児の低体重リスクを減らすことはできないとする研究もある。「妊娠が判明してから歯科治療を受けるのではなく、妊娠前から健康な歯周状態を有することが、生まれてくる子どもの適正な体重に関係する可能性が示唆される」と、研究グループは述べている。
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