肝がん診断の検査感度63.2%、特異度90.0%、早期のがんでも41.7~58.0%
山口大学は3月11日、肝細胞がんの診断ツールとして、SEPT9遺伝子をターゲットとし、血清0.4mLと微量検体で定量測定の可能な高感度メチル化解析法を開発、さらに、同解析法が、肝がん診断の検査感度63.2%、特異度90.0%であり、早期のがんでも41.7~58.0%と高い検出能力を示したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科臨床検査・腫瘍学講座の山﨑隆弘教授、末廣 寛准教授、消化器内科学講座の坂井田 功教授、および消化器・腫瘍外科学講座の永野昭浩教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米国肝臓学会(AASLD)の機関紙「Hepatology Communications」の電子版に掲載されている。
画像はリリースより
現在、国内では年間約2.7万人が肝細胞がん(肝がん)で亡くなっている。以前の肝がんの原因はウイルス肝炎、特にC型肝炎ウイルス(HCV)が主だったが、HCVの排除が可能となり、非ウイルス性肝がん(NBNC肝がん)が増加している。しかし、NBNC肝がんのスクリーニング検査は存在せず、進行肝がんの比率が増加しており、新たなスクリーニング検査の開発が切望されてきた。その候補としてリキッドバイオプシー検査があるが、肝がん診断のリキッドバイオプシー検査は実用化されていない。
がんは遺伝子の異常により起こる病気であり、その遺伝子異常の1つとしてDNA(遺伝子)メチル化がある。米国では大腸がんのスクリーニング検査としてメチル化SEPT9の定性検査である「Epi proColon」が承認されており、同検査が肝がん診断に有用との報告もあるが、同検査法はわが国では認可されていない。しかし、同検査には約4mLの多量血漿が必要で、定量性がないなどの問題点がある。
簡便、微量検体測定可能で低コスト、NBNC肝がんのスクリーニング検査への応用にも期待
研究グループは、それらの問題点を解消したSEPT9高感度メチル化解析法を開発し、微量検体(血清0.4mL)で、かつ高感度な定量化に成功。そして今回、肝がんに対するSEPT9高感度メチル化解析法の有用性を検証した。
まず、保存血清からDNAを抽出し、独自に開発した高感度メチル化解析法(特許出願)で、SEPT9メチル化レベルを定量した。3種類のメチル化感受性制限酵素で処理すると、メチル化DNAは残存するため、デジタルPCRを用いることで、従来技術の100倍の感度で定量化が可能となる。対象は、健常コントロール80人、肝がんのない慢性肝障害患者45人、肝がん患者136人の計261人。中央値は、健常コントロール0.0コピー、慢性肝障害2.0コピー、肝がん6.4コピーと肝がん患者で有意に上昇を認めた。健常コントロールと肝がん患者におけるROC解析にて、4.6コピーをカットオフ値とした場合、検査感度63.2%、特異度90.0%が得られた。
肝がんの進展(BCLCステージ0/A, 超早期/早期肝がん;ステージB, 中等度肝がん;ステージC, 進行肝がん)に伴い陽性率は上昇したが、ステージ0/Aでもそれぞれ41.7/58.0%と高い検出感度を示した。またNBNC肝がんの検出感度も66.7%と、ウイルス肝炎関連肝がんの検出感度と遜色ない結果だった。
研究グループは、「開発した新たなリキッドバイオプシー検査は、簡便かつ微量検体測定可能で低コストの検査法であり、NBNC 肝がんのスクリーニング検査としても有用ではないかと考えている。今後、実用化に向けた研究を展開していく予定だ」と、述べている。
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